まず株価の推移に目を向けると、日本株、外国株ともに2020年1~3月にかけてコロナショックで急落しました。しかし、ワクチンの開発や各国金融当局によるコロナ対策としての金融緩和・財政出動などを背景にV字回復をみせ、2021年末時点ではコロナ前の水準を大幅に上回っていることはご存知の通りかと思います。
コロナショックの際に、皆さまはどのような投資判断をされましたか?状況判断をしたうえで、『つみたて投資』を継続している方、いったん休止した方、中にはつみたて額を増やした方もいらっしゃるかもしれません。
いずれにしても、現在の投資資産額がどのようになっているか状況を改めて確認しておくことをお勧めします。
※2019年1月4日~2022年1月31日、日次
日本株:東証株価指数(配当込み)外国株:MSCI KOKUSAI 指数(除く日本・円ベース)
(出所)NRI Fundmark/DLより野村アセットマネジメント作成
下のグラフは、投資信託の基準価額と買付額の推移を示したものです。
投資信託の種類別に2つ(国内株式型ファンド、海外株式型ファンド)掲載していますが、どのグラフにも共通しているのは基準価額が上昇する過程で買付額も増えていき、一方で価格が下がったタイミングでは買付額は減少する傾向が見られることです。中には、基準価額が下がった時でも買付額が大きく増えた時期もありますが、トレンドが変わったというほどではありません。
2年前のコロナショック時もほぼ同様に買付額は減少していました。このデータは買付額ですので、人数については推測となりますが、これを見る限り、基準価額が下がった時に買った人たちは少なかったようです。これではなかなか収益をあげることは難しくなってしまいます。
基準価額が下がったら買いたい、できれば一番安い時に買いたいと考えるのが人間の心理です。しかし、そのタイミングをあてるのは簡単ではありません。実際には基準価額が下がっても買うことはなかなか難しく、ましてや、いつが一番安いタイミングなのかをあてるのは至難の業であることはこのグラフからも想像できると思います。
一方で、『つみたて投資』を継続している皆さまはコロナショックで基準価額が下がった局面でも継続して買い続け、その後の基準価額回復&上昇の恩恵を受けられた方もいらっしゃったかと思います。時間分散の効果が発揮された事例と言えるでしょう。定期的に投資資産額のチェックをしている方は、基準価額が下落から上昇へ反転する時の『つみたて投資』の効果や回復の力強さを実感されたのではないでしょうか。
投資信託の基準価額は、各分類に含まれるすべてのファンドのパフォーマンスを加重平均して算出。
2014年12月末の値を10,000として指数化
期間:2014年12月~2022年1月、月次
(出所)NRI Fundmark/DLより野村アセットマネジメント作成
基準価額が下落する局面でも投資し続けることによって、その後の基準価額回復&上昇時に収益の積み上げを狙える『つみたて投資』。一括でまとめて投資をした場合と比べるとどのような違いがあるのでしょうか?
1999年末にITバブルがはじけてから日本の株価が元の価格に戻るまでの間で、『つみたて投資』と一括投資をしていた場合を比較してみました。
一括投資の場合は投資額が元本に戻る(=株価が元の価格に戻る)までに約72ヵ月かかったのに対して、『つみたて投資』の場合には投資元本回復までの期間が約51ヵ月と約21ヵ月早まりました 。価格が下がっている間、コツコツと買い続ける効果がこのように投資元本の回復力の違いとなって現れます。さらにこのケースでは、一括投資が元本を回復したときには、『つみたて投資』は約50%の評価益となっていました。
株価暴落(下落する局面)といっても、実際には下落幅や低迷する期間、株価推移の形状はそれぞれ異なります。したがって、実際に元本を回復するまでの期間がどれくらいになるかはケースバイケースで変わってきます。しかし、一括投資に比べて、つみたて投資は投資元本に戻るまでの期間が短縮化されることが多く見受けられます。
投資をするうえで価格下落を避けることは簡単にはできません。一括投資の場合は、価格の回復をじっと待つ形になりますので、その間はストレスもかかるものです。価格が不安定でいつが一番安いタイミングなのかがわからない時でも、時間分散による『つみたて投資』は効果的な投資方法といえそうです。
上記グラフは、各月末の投資評価額を投資額で除算し、1万倍した数値の推移を示したもの。
株価:東証株価指数(配当込み)期間:1999年12月~2005年12月、月次
つみたて投資:1999年12月から毎月末に一定金額を投資。一括投資:1999年12月末に投資をし、その後は追加投資をせず。
計算に際しては手数料、税金等は考慮せず。上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
投資をするうえで価格下落を避けることは簡単にはできません。 『つみたて投資』の場合、基準価額が下がっている間、コツコツと買い続ける効果が投資資産額の回復力の違いとなって現れます。
毎日100円のお小遣いをもらってリンゴを買いに行くとします。
1個あたりのリンゴの値段が次のように動いた場合、100円で買える個数は毎日変わります。毎日値段が下がっていったので、リンゴを買った値段の平均値は100円、67円、43円、36円と日々下がります。
ドルコスト平均法(定期的に、継続して、一定の金額で投資する方法)は、購入するものの価格が変動する場合、下の図のように1個あたりの平均の値段(平均購入単価)が変化していきます。
一方で、もしも毎日1個ずつ買った場合はどうなるでしょう。
1個あたりの平均の値段の下がり方に違いがありますね。上段で説明したように、決まった金額で買う方法(ドルコスト平均法)は値段が安くなった時に多くの個数を買うことができるため、平均の値段が大きく下がっています。値段の違いからその効果がよくわかると思います。
このリンゴの値段を投資信託の基準価額に置きかえてみましょう。次のグラフは、2019年12月に毎月10,000円の『つみたて投資』(ドルコスト平均法)をはじめた場合の投資信託の基準価額と平均購入単価の推移です。投資信託の基準価額が下がった時に購入することで平均購入単価を引き下げていることがわかるでしょう。この効果がのちの基準価額回復時の収益獲得に繋がっているのです。
ドルコスト平均法とは、平均購入単価を意識した投資戦略と言い換えられるかもしれません。
投資信託の基準価額は東証株価指数(配当込み)を使用。手数料、税金等は考慮せず。
期間:2019年12月〜2020年8月、月次
(出所)野村アセットマネジメント作成
つみたて投資は基準価額が下がった時に購入することで平均購入単価を引き下げます。ドルコスト平均法の効果がのちの基準価額回復時の収益獲得に繋がっているのです。
「何に投資したらよいのか?」も重要ですが、「どうやって投資をするか」もとても大切な要素です。『つみたて投資』はまさにその解決策の一つといえるでしょう。
「授人以魚 不如授人以漁」という格言があります。魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えれば自分でいつでも魚をとって食べられるようになる、という意味のようです。私はこれを自分の子供たちに実践しています。魚の釣り方を教えるように、『つみたて投資』という投資方法があることを授けています。しかし、これを伝えるのがなかなか思うようにはいきません。
いま多くの方々がiDeCoやつみたてNISAという非課税制度を利用して投資の世界に足を踏み入れています。投資への扉を開いた第一歩が『つみたて投資』になるケースは少なくないでしょう。
だからこそ丁寧に『つみたて投資』の特徴を伝えていきたいと私は考えています。
大学での講義や、最近では高校生向けに授業を行なう機会も増えてきました。これが世の中の流れなのでしょう。アセットマネジメントビジネスに30年以上携わってきましたが、ようやく本格的に資産形成の時代へ動き始めたと感じています。
『つみたて投資』について知ること。投資初心者のみならず、それは投資をするうえでの大切なポイントを思い出させてくれるものだと思っています。
基準価額が下がった時に買った人たちは少なかったようです。『つみたて投資』をしている方は、基準価額が下落から上昇へ反転する時の『つみたて投資』の効果、回復の力強さを実感しているのではないでしょうか。