次世代経営者インタビュー

#1 やらなければ何も始まらない「やったらええやん」の姿勢で拓く未来

ローランド ディー.ジー.株式会社
代表取締役 社長執行役員

田部 耕平氏

Keyword

  • ローランド ディー.ジー.
  • 海外
  • 日本の技術力
  • マネジメント
  • モチベ―ション

「新しい風で日本の未来を切り開く。」

本インタビューでは、次世代の日本を担う若き経営者をシリーズで紹介します。
第1回は、業務用インクジェットプリンターや工作機器の製造・販売を手がけるローランド ディー.ジー.の田部耕平(たなべ・こうへい)社長にお話を伺います。新卒で入社後、海外営業、新規事業の立ち上げ、グループ会社のトップなどの多彩な経験をされた田部社長に、ご自身の経営スタイルに影響を与えた子ども時代の経験や、トップマネジメントとしてどのような思いをもって変革に挑んできたのかについて語っていただきました。

ローランド ディー.ジー.株式会社のロゴの前で笑顔の代表取締役 田部氏と聞き手、野村アセットマネジメント株式会社 蒲生
左︓
ローランド ディー.ジー.株式会社(以下、ローランドDG)
代表取締役 社長執行役員 田部 耕平氏
右︓
[聞き手]野村アセットマネジメント株式会社 企業調査部
シニア・エクイティアナリスト 蒲生 宗央

アメリカで感じた日本の技術力の高さがきっかけに

蒲生 田部社長は、中学から高校卒業までの多感な時期をアメリカで過ごされた後、日本の大学を卒業し、ローランドDGに新卒で入社されたそうですね。アメリカでの経験は、仕事選びにどんな影響を与えましたか。

田部 アメリカで私の原点ともいえる出来事がありました。あるとき、アメリカ人の友人が、私が持っていたSONYのウォークマン®を見て、「それはなんだ?」って言うのです。当時のアメリカのポータブル・オーディオ・プレーヤーは、弁当箱のように大きく、ボタンも飛び出ていて不格好でしたが、私の最新式のウォークマン®は本体も薄くて、ボタンも飛び出ていない。イヤホンは耳に直接入れるタイプで、彼に聞かせてみると、「こんなに小さくて、音がきれいだなんてあり得ない!」と感動していたんです。生まれて初めて日本の技術力のすごさを感じた瞬間で、とても衝撃的で。その時に、日本の技術を世界に発信していきたいという思いが生まれ、それは今でも貫いています。
帰国後、大学では英米文学を専攻し、英語力に磨きをかけて、最終面接では「英語力を活かして、日本のすごさ、技術力の高さを世界に見せつけたい」とアピールしたことを覚えています。

アメリカでの経験について質問する蒲生(左)と、それについて熱弁する田部氏(中央)の写真

蒲生 英語を武器に、入社1年目から海外営業部に配属され、30歳の時にはEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)を統括する立場を担われたそうですね。若くして言葉や文化、商習慣も大きく異なる国・地域で仕事をすることには、ご苦労も多かったと思います。

田部 そうですね。ただ、アメリカでの経験もあり、私は年齢への気後れはありませんでした。田部という人間を認めてもらうためには、年齢よりも私がどんな価値を提供できるかの方が遥かに重要でした。お客さまから価値があると判断してもらえれば、きちんと扱われますし、より高いレベルの提案を要求され、結果的にたくさんの経験を積むことができました。

自身の仕事が「人の人生を変えられる」ことを実感

蒲生 ご自身のキャリアの中でターニングポイントになったことはどのような経験ですか。

田部 海外営業を10年経験した後、デンタル事業の立ち上げに参画しました。立ち上げ当初、販売店やデンタル事業の顧客は「あなたたちはプリンターの会社でしょ。デンタルなんて大丈夫?」と半信半疑の反応でした。それでも、お客さまときちんと話をして信頼を獲得できると、製品を使ってくれるところが出てくるようになりました。

  • プリンター事業で培った精密な位置制御の技術を応用し、歯の詰め物や被せ物、入れ歯などを製作する歯科技工のデジタルソリューションを提供するビジネス。

当時の歯科技工所では、歯科医の注文を受けて詰め物や被せ物、インプラントなどの技工物を手作業で作っていました。歯科医の指示は絶対に守らなければならず、昼夜を問わず作業が続く、厳しい労働環境でした。それを当社の製品によって歯科技工物の製作の自動化を提案したんですね。
いち早く採用してくれたお客さまの元を訪ねると、「田部、ありがとう。おかげで寝られるようになったよ」と、とても喜んでくれました。1年後に再び訪れると、「儲かったよ」といわれ、技工所の前には高級車が停まっていたのです。事業の立ち上げ当初、社内も販売店も半信半疑でしたが、私たちの製品がもたらした究極のサクセスストーリーを目の当たりにして、大きな衝撃を受けたことを覚えています。
「我々の力でこんなに人の人生を変えられるんだ」「それが1件あれば、2件目も、3件目もつくれるはず」「そうなれば業界そのものを変えられる」と、社員みんなに想いが伝播し、デンタル事業は一気に加速していきました。

ターニングポイントの経験について質問する蒲生(左)と、ターニングポイントとデジタル事業について解説する田部氏(右)の写真

立ち位置の見える化によって、同じ方向を向く

蒲生 2017年にはデンタル事業にフォーカスした子会社を設立、これまでの実績から同社の社長に就任されました。「よきプレーヤー=よきマネジメントではない」と言われることもありますが、自ら手を動かすことと人を動かすことのバランスについて、どのようにお考えになり実行されましたか。

田部 デンタル事業の立ち上げでは、自分でも手を動かしつつ、周囲に影響を与えていくことの両方を心掛けました。なぜなら最初は誰も私の言うことを聞いてくれなかったんです(笑)。結果が出ると、耳を傾けてくれるようになりました。ですから、どうすれば結果が出せるのかを自ら示して伝えました。当然ですが、一人でできることには限界がありますから、自分でもやりつつ、周囲を巻き込むことが大切だと思います。

蒲生 例えば、開発、営業、バックオフィスなどさまざまな職種の人材がいて、成果の出し方はそれぞれ異なります。マネジメントのやり方やモチベーションの保ち方も違うと思うのですが、このあたりはいかがでしょうか。

田部 60~70名の社員全員とマンツーマンでやりとりをすることは物理的に難しいので、極力全体へ向けてメッセージを発信しました。自分たちは今どこにいるのか、開発や売上などの進捗をできるだけ見える化することで一体感が生まれ、みんなが同じ方向を向いて仕事ができるようになったと思います。そういった意味では、当社の社長に就任した今もやっていることは同じで、ギャップは感じていません。

マネジメントやモチベーションについて質問に答える田部氏の写真
マネジメントやモチベーションについて質問する蒲生の写真

蒲生 社員との一体感を醸成するために大切にしているフレーズやスローガンがあれば教えていただけますか。

田部 「やったらええやん」ですね。特に開発系の社員は失敗したくないという気持ちが強かったりします。でも、失敗したっていい。やってみなきゃ何も始まらないし、私はやらずに後悔するほうが嫌いなので、ことあるごとに言っています。
また、メーカーとしては、常に世の中、時代の先を走っていたい。後追いはいやなので、「そういう時代じゃん」と、何かを決断する時には言っていますね。

社員のモチベーション向上が成果に結びつく

蒲生 2020年3月のローランドDG社長へ就任時、グループ全体をマネジメントする立場として一番変えなければいけないと思ったところは何ですか。

田部 当時は新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発出し、在宅勤務を推奨していました。この先どうなるかわからない不安の中、社員のみんなとどうやってコミュニケーションをとり、会社としての一体感を醸成するかが大きな課題でした。直接会って話すことが難しい状況でしたので、「社長の部屋」というブログのようなもので、私が思っていること、考えていること、望んでいることを社員に向けて発信するようにしました。
働き方の面では、在宅勤務に加えて、2021年1月よりフレックス勤務制度を導入しました。月10日間の在宅勤務に加えて、フレックス勤務を駆使することで、社員の働き方は大きく変わったと思います。フレックス勤務を活用して家事を済ませたり、銀行や病院などに立ち寄ってから出勤することも可能になったので、非常に助かっているという声を聞いています。東京オフィスの移転の際には、勤務制度だけでなく内装なども今風の環境を整えることで、「会社に来るのが楽しい」と言ってくれる社員もいます。
一方で、働き方改革を推し進めるにあたって懸念したのは、仕事をサボる人が出てくるんじゃないかということです。しかし、業績が示すとおり、業務効率や社員のモチベーションを上げるほうが成果に結びつくことは明らかです。どうすれば社員が仕事をしやすいかという視点で制度や仕組み、環境を整えてきたことで、“自律的に働ける人”は増えてきたと感じています。今後も続けていきたいですね。

ローランドDG社長へ就任時の状況についての質問に対しての田部氏より回答を聞く蒲生の写真

蒲生 ご自身の中で、今後これはやらなければならないという課題はありますか。

田部 売上が急速に伸びているとはいえ、中期経営計画(中計)でも掲げているように、まだまだ割合の低いデンタル事業の比率を高めて、事業ポートフォリオを変えていくことです。中計の1年目では早期退職をはじめとした構造改革で、筋肉質な企業体質に変えることができました。ただ、いつまでも“筋トレ”をしていても仕方ないので、リソースもマインドも新しい事業や開発にシフトしていきます。
会社のマインドをシフトしていくための取り組みのひとつとして、教育プログラムを拡充しました。これを使って、高校卒業後に入社したばかりの18歳の新入社員が、難易度の高いIT資格を取得したのです。これは一例ですが、少しずつ会社のカルチャーが変わりつつあるように感じていますね。年齢や経歴に関係なく、やる気のある人のチャレンジを応援する文化を醸成することで、新規事業のタネも生まれやすくなると思っています。新しい領域に社員がもっとトライできるような仕組みを作ることが、私の大事な仕事の一つだと考えています。

今後取り組む課題について語る田部氏(中央)と、その話を聞きいる蒲生(後ろ姿)の写真

蒲生 最後に働き盛り世代の読者にメッセージ、アドバイスをいただけますか。

田部 先々の社会、世の中がどうなっていくのか、常にアンテナを張り巡らせ、予測しながら、先手を打つことが重要だと思います。間違えることもありますが、やらなきゃ始まりません。私たちもどんどんチャレンジをしていきます。

蒲生 田部社長のお考えや取り組みの元で時代にあわせたビジネスモデルの転換を図っているローランドDGの企業カルチャーが、育っているのですね。今回は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

上記の内容は投資勧誘を目的としたものではなく、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。
上記の内容は「次世代の日本を担う若いと考えられる経営者」のご紹介であり、採り上げた企業を当ファンドが保有しているとは限りません。
(掲載日:2022年7月29日)

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