2022年の世界の株式市場は、世界的なインフレ加速やそれに伴う各中央銀行による積極的な利上げを背景に、値幅調整を余儀なくされています。実際、世界株の値動きを示すMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(米ドルベース)の年初来騰落率は▲18.8%(8月31日時点)と20%近い下げとなっています。
こうした中、相対的な底堅さが目立っているのが日本株です。
TOPIX(東証株価指数)の年初来騰落率は▲1.5%(8月31日時点)と世界株を大きく上回るパフォーマンスとなっています。
日本株堅調の背景には、
などがあります。
実際、株価と連動性が高いTOPIXのEPS(1株あたり利益)は拡大基調が継続しており、2024年末に向けても過去最高益の更新が継続するとみられています(図1)。
こうした点を踏まえると、中長期的にみて日本株は上昇基調を辿る公算が大きいと想定されます。
また、日本株が業績面からみて、バリュエーション妙味が大きいことも支援材料といえます。
9月2日時点 のTOPIXの12ヵ月先予想PER(株価収益率)は12.1倍と、2012年からの約10年間の平均である13.7倍を下回っており、業績面で割安感が強まっています(図2)。
今後も日本企業の業績拡大が継続する可能性が高いなか、
「株価=EPS×PER」という点を考慮すれば、
日本株は企業業績とバリュエーションの両面からみて、
上昇余地が大きいと考えられます。
中長期的な視点では、収益力の向上が日本株の大きな課題といえます。
海外投資家の日本株持ち高と日本株-先進国株ROE(自己資本利益率、稼ぐ力)差の関係をみると、概ね連動していることがわかります(図3)。
近年は同ROE差が再び拡大しており、
世界における日本株の相対的な稼ぐ力の弱さが、
日本株に対する海外投資家の消極姿勢につながっていると考えられます。
安倍政権が取り組んだアベノミクスによって日本に活力が戻り、日本企業のROE向上とそれに伴う海外投資家の日本株買いが膨らんだことは記憶に新しいです(図3)。
長期政権が期待される岸田政権は、家計と企業の余剰資金の有効活用に官民共同で取り組むことを政策の枠組みとしており、アベノミクスのように日本に変化をもたらそうとしていると考えられます。
日本の変化が現実化すれば日本株への海外投資家の見直し余地は大きいといえます。
日本株は米国株などと比べると、長期的なリターンが低いとみられがちです。確かにTOPIXなど指数のリターンが海外株と比べ低いことは事実です。
もっとも、視点を変えると別世界が広がるのが日本株のもう一つの側面です。
日本を代表する100社で構成するTOPIX100の中で、直近10年間の純利益増加額上位20社のパフォーマンスをみるとTOPIXを大きく上回るだけでなく、S&P500種株価指数にも勝る動きとなっています(図4)。
日本株は「森よりも木をみる」投資スタンスが適しているといえ、インデックス投資よりもアクティブ投資を行なうことで、米国株を上回る運用成果を目指すことも可能といえます。
日本企業を応援する形で長期的視点で投資してみるのも一手ではないでしょうか。
(掲載日:2022年10月4日)
*石黒英之が見る日本株市場は、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。
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