実際の運用においてESGの要素を運用プロセスに組み込んで投資判断に活用する、いわゆるインテグレーションの取組みは重要です。
財務的な経営パフォーマンスと非財務情報であるESGへの対応との間には密接な関係があり、相互に影響するものであると考えているからです。当社では投資先企業に対して独自のESG評価を行い、投資判断に活用しています。企業を評価する財務情報などのファンダメンタルズ分析を土台として、ESGを含めた非財務情報の評価を効果的に運用プロセスに組み込むために、株式運用と債券運用の双方で、当社独自のESG評価を行っています。
こうした手法を運用に統合することは、ダウンサイドリスクの低減のみならずリターンの向上のために必要不可欠な手段となっています。ESG評価は日本企業だけではなく、欧米先進国、アジアやエマージング諸国の企業も対象の範囲としています。気候変動や人権などのグローバルな共通テーマに加え、個別産業・企業ごとのESG課題を抽出し、様々なリサーチや複数の外部評価情報を活用しながら、当社独自のESGスコアを付与し、運用に活用できる体制を構築しています。
インテグレーションにおける特徴
企業価値は、基本的には将来のフリー・キャッシュフローの割引現在価値です。それを生み出す事業資産には、生産設備などの企業の固定資産だけでなく、人的資本、自然資本、社会資本など、財務諸表には表れない様々な無形資産が含まれます。そうした様々な資本、つまり非財務情報も含めた事業資産の評価が企業価値の分析には欠かせません。当社は財務情報に加えて、非財務情報も企業評価に反映させ、それを基に投資判断を行なっていくことが運用による付加価値向上のために必要と考えています。
企業の財務情報に表れない無形資産の評価には2つの側面があります。ひとつは、無形資産がもたらす収益、すなわち「成長性評価」としての側面であり、もうひとつは、その企業の収益がさらされている「事業リスク評価」としての側面です。前者は、気候変動の変化が事業に与える影響、サプライチェーンの強靭性、知的財産、研究開発力や組織の力、人材の質、多様性などが競争力の源泉、差別化要因として、将来的に企業の収益や成長性といった財務情報として顕在化するものです。後者は、それらの無形資産の蓄積ができているかどうかで、将来の収益が安定的、持続可能なものか、事業環境の変化によって激しく浮き沈みしてしまうものか、というリスクを把握する側面です。つまり、この「事業リスク評価」は、将来キャッシュフローを現在価値に割り引く際の割引率をどう評価するか、という視点そのものです。言い換えると、無形資産の評価を、投資対象となる企業のバリュエーション(株価の割高割安指標)が割安なのか、割高なのかを判断する一つの要素として取り込むということです。
実際に評価を行なう際には、当社の企業アナリストによる個別企業へのESG調査を土台にして、ESGインベストメントマネージャー主導のもと、企業アナリストとESGスペシャリストが協力して作成している独自のESGスコアを活用します。当社のESGスコアは、環境・社会・ガバナンス・SDGsにより構成されており、リスク要因や投資機会がどの分野にあるかなどの分析・評価を行ない数値化することで、個々の運用商品の運用プロセスにあるストラテジー・プラットフォームにおいて投資格付け(投資判断)をする際の重要な判断材料のひとつとしています(下図参照)。投資格付けに応じて、ポートフォリオの個別銘柄の売買が行なわれますが、同スコアを企業アナリスト、ESGスペシャリスト、ESGインベストメントマネージャー、運用者が議論する際の共通言語として機能させることで、より効果的な運用へのESGインテグレーションを行なうことが可能となっています。また、追加的なESG調査が必要であると判断した場合、エンゲージメント推進室を中心に、企業アナリストやESGスペシャリストが協働して、必要なエンゲージメント活動を行ないます。ESG評価体制はグローバル株式においても構築されています。気候変動や人権などの共通テーマに加え、個別産業・企業のESG課題を抽出し、複数の外部評価情報を活用しながら、当社独自のESGレーティングを付与し、運用で活用しています。
2024年5月現在
上記は、運用等の一部を外部に委託するファンドを除きます。