野村アセットマネジメント

気候関連開示

気候変動は投資先企業の経営戦略において最も重要なESG課題のひとつです。投資先企業の気候関連リスク・機会は当該企業の財務および企業価値に影響を与えるため、当社の運用資産の価値にも影響を与えることになります。また、TCFD提言や世界の様々な指針・規制により、運用資産等に係る気候関連開示を行うことが当社に求められています。 このような中、当社は、気候関連リスク・機会に対する運用の高度化を進めるとともに、エンゲージメントを通じて投資先企業の経営戦略に気候変動対策を統合してもらうことで、脱炭素社会の実現に貢献します。当社の気候関連の取り組みおよび運用資産における気候関連分析の結果については、詳細な開示を実施することにより、当社の取り組みの透明性を高め、お客様をはじめとするステークホルダーに対する説明責任を果たしていきます。

Report

TCFD提言に基づいた気候変動および投資先企業の気候変動に関する「リスク」および「機会」(気候関連リスク・機会)に対する当社の取り組みを詳細に開示しています。

当社ポートフォリオにおける気候関連分析

TCFD提言に基づく情報開示

項目
内 容
ガバ
ナンス

当社は気候関連リスク・機会を当社のビジネスや中長期的な経営目標に重要な影響を与える要素として位置付け、適切なガバナンス体制を構築しています。気候関連開示の事務局である責任投資調査部が取りまとめた炭素指標やシナリオ分析、ESGスコア等の気候関連リスク・機会に関するデータは経営会議を通じて、最終的に取締役会へ報告されており、取締役会は当社の気候関連リスク・機会を適切にモニタリングすることができています。

事務局が取りまとめた気候関連リスク・機会に関する分析データは、運用調査ユニット内で共有され、企業分析やエンゲージメント、投資判断などに活用されています。これらの分析データは定期的に運用調査ユニットの責任者で構成される責任投資委員会に報告され、ポートフォリオの気候関連リスク・機会を評価します。例えば、毎年3月の責任投資委員会では前年末のポートフォリオの分析データが報告され、7月には気候変動関連のエンゲージメントにおける重点テーマが決定されています。また、責任投資委員長が評価結果を経営会議に報告し、経営陣はこれらの報告内容を活用して、経営の意思決定を行います。

戦 略

当社では短期・中期・長期における様々な気候関連リスク・機会を認識しています。移行リスクではカーボンプライシングや座礁資産化、消費者行動・選好の変化、物理的リスクでは近年増加傾向にある異常気象を注視しています。一方、機会では、再生可能エネルギーや省エネルギー、蓄電、水素、アンモニア、CCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)、カーボンリサイクル、防災・減災などに関連する技術や製品・サービスに注目しています。また、当社は、脱炭素社会の実現に向けて長期的な戦略に則り、着実なGHG削減の取組みを行う企業を支援することを目的としたトランジション・ファイナンスにも注目しています。GHG排出量が多い投資先企業について、当社は対話の機会を失うダイベストメントは原則行わない方針であり、継続保有によるエンゲージメント等を通じて投資先企業に気候変動対策を働きかけています。

当社はInstitutional Shareholder Services(ISS)社の気候関連リスク・機会に関する分析手法に加え、当社の日本株式を対象にしたESGスコアにおいて内部炭素価格を活用した財務分析および移行リスク分析を行うなど、気候関連リスク・機会が当社のビジネスや戦略、財務計画、ポートフォリオに及ぼす影響を精緻に分析しています。

当社が4資産統合ポートフォリオに関して実施したシナリオ分析は、こちらをご覧ください。

リスク
管理

投資先企業の気候関連リスクについては、企業単体の炭素指標のみならず、企業の製品・サービスにおけるライフサイクルやサプライチェーン全体での識別・評価が重要であると考えます。さらに、除去量や削減貢献量などを気候関連リスクの分析において参考にしています。

当社はISS社の移行リスクおよび物理的リスクの分析手法を活用し、ポートフォリオのリスク管理を行っています。また、当社独自の企業分析やESGスコアの活用、エンゲージメントなどを通じて、投資先企業の移行リスクや物理的リスクを把握し、管理しています。

これらのリスク管理の分析結果は運用調査ユニット内で共有され、責任投資委員会でモニタリングされた後、経営会議や取締役会に報告されるなど、総合的なリスク管理プロセスに統合されています。

指標と
目標

当社は、自社の戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連リスク・機会を評価するため、株式・事業債のポートフォリオについては、TCFDが推奨する4つの炭素指標(総炭素排出量、カーボンフットプリント、炭素強度、加重平均炭素強度)の計測やシナリオ分析、移行リスク分析、物理的リスク分析などを実施しています。

総炭素排出量の分析では、企業が開示するスコープ1とスコープ2(企業が開示していない場合にはISS社の推定値)に加えて、ISS社の推定値であるスコープ3を活用しています。一方、カーボンフットプリントや炭素強度、加重平均炭素強度ではスコープ1とスコープ2のみを利用しています。

当社は2050年までに自社の業務上および運用資産(投資ポートフォリオ)のGHG排出量をネットゼロにする「2050年ネットゼロ目標」を設定するとともに、2030年時点におけるSBTポートフォリオカバー率を55%とする「2030年中間目標」を設定しています。これらの目標に対する実績はNZAMから指定されているメソドロジーに基づき検証・報告を行います。

2050年ネットゼロ目標および
2030年中間目標

当社は脱炭素社会に向けた取り組みに賛同し、「2050年ネットゼロ目標」と「2030年中間目標」を設定しています。
2050年までにGHG排出量のネットゼロ達成に向けて運用する資産について、2030年時点における中間目標を当社運用資産の55%に設定しました。
2030年中間目標の達成に向けて、投資先企業におけるネットゼロ達成に向けた経営のコミットメントや具体的な目標内容を引き続き精査していきます。

「2050年ネットゼロ目標」と
「2030年中間目標」を達成するための
当社の取組み

取り組み
内 容
投資ポートフォリオにおける
GHG排出量の計測

当社は、投資ポートフォリオのGHG排出量(Financed Emissions)として、投資先企業のスコープ1、スコープ2に加え、重要性が高いスコープ3を可能な限り考慮に入れて計測しています。投資先企業がGHG排出量を開示していない場合には、ESG評価機関の推計値を活用します。投資ポートフォリオにおけるGHG排出量の計測は、投資ポートフォリオにおけるGHG排出量の計測は、PCAFが定める基準に従います。

投資ポートフォリオにおける
GHG吸収量の計測

投資ポートフォリオのGHG吸収量では、投資先企業が最大限に削減の努力をした後に残ってしまう残余排出量について、投資先企業が開示する植林やCCUSなどによる直接的な吸収量を計測するとともに、カーボン・オフセットや削減貢献量、REDD+などを参考にします。

金融商品の開発

「2050年ネットゼロ目標」および「2030年中間目標」と整合した脱炭素社会の実現に貢献する金融商品を開発します。

アセットオーナーとの
情報共有

「2050年ネットゼロ目標」、「2030年中間目標」や投資ポートフォリオにおける気候関連リスク・機会の分析結果をアセットオーナーと共有し、2050年ネットゼロの実現に向けて連携して取組みます。

スチュワードシップ活動や
ステークホルダーとの
連携強化

「2050年ネットゼロ目標」および「2030年中間目標」を達成するために、これらの取組みとエンゲージメント、議決権行使などのスチュワードシップ活動との連携を高めます。また、当社ステークホルダーとの連携を強めるとともに、これらをサポートする政策提言を実施します。

透明性の高い開示

当社の投資ポートフォリオにおける気候関連リスク・機会の分析結果や「2050年ネットゼロ目標」、「2030年中間目標」の達成状況は責任投資レポートで定期的に開示するなど、当社の取組みの透明性を高めます。

※開発途上国における森林減少・劣化の抑制などによって温室効果ガス排出量を削減あるいは吸収量を増加させる気候変動対策。

2021年10月設定

当社ポートフォリオにおける
気候関連分析