野村アセットマネジメント

社会的価値を生み出すインパクト投資

コラム第3回│
「社会的インパクト(社会的価値)」を測る(前編)

第3回「社会的インパクト(社会的価値)」を測る(前編)のイメージ

「社会的インパクト(社会的価値)」をどのように測るのか、ということは重要な課題です。つまり、インパクトを測るという事は、「社会的インパクト」を定義して、どのような状態になったら「社会的インパクト」が生じたかの判断を求められることに他ならないからです。例えば、「環境に優しい製品の売上を高めることで環境の悪化を防ぎます」といったような、ぼんやりとインパクトを想像させるような定義では不十分です。何らかの形で、定量的な目標を定義することにより、明確な目標を達成することで判断が可能となります。

「社会的インパクト」の定量化による評価が可能となれば、バックキャスティング(未来のある時点に目標を設定しておき、そこから振り返って現在すべきことを考える方法)という手法を活用することが可能となります。この手法により、定量的に定義された「社会的インパクト」を生み出すためには、どのような手段で、どの程度の労働や資本が必要であるかを想定できるようになります。「社会的インパクト」を生み出す投資を行なうためには、こうした前提をベースに支援プログラムや事業活動を行なう必要があります。インパクトに至るプロセスが明確に定義されていれば、インパクトを生み出すプロセスにおける成果指標(KPI)設定とそのモニタリングにより、進捗の把握や問題発生時にも柔軟な対応が可能になるはずです。

「社会的インパクト」を生み出すプロセスには様々な考え方があります。その中では、インパクト投資の基本的なプロセスを5つの要素で構成しているロジックモデルが分かりやすいでしょう。その構成項目は、①インプット(投入)、②アクティビティ(活動)、③アウトプット(結果)、④アウトカム(成果)、⑤社会的インパクト(社会・経済的変化)となっています。

「社会的インパクト」を生み出す
基本のロジックモデル

「社会的インパクト」を生み出す基本のロジックモデル

①インプット(投入)は、活動に伴い使用されるものであり、人材や資金などといったリソースやそれを取り巻く環境などを示し、②アクティビティ(活動)は、インパクト創出のためにリソースなどを使用することを示しています。この①インプットと②アクティビティは、リソースを用いて生産物を創り出すプロセスと考えれば理解しやすいでしょう。

③アウトプット(結果)は、②アクティビティ(活動)による直接的な成果と捉えられ、生産活動の結果として提供される製品やサービスといえます。しかし、この提供された③アウトプット(結果、製品やサービス)だけでは、「インパクト」を測ることは困難です。③アウトプットされたものを、④アウトカム(成果)として捉え直す必要があります。具体的には、温室効果ガス(GHG)排出量を抑制する製品を製造・販売(③アウトプット)し、その結果として〇万トンの温室効果ガス(GHG)排出量を減少(④アウトカム)させた、として捉えるということです。そして、この④アウトカム(成果)が数年に渡り継続される(積み重ねられる)ことで、社会的・経済的な変化が生じることを⑤「社会的インパクト」を生み出していると考えます。

これまで見てきた「社会的インパクト」を生み出すプロセスは、支援プログラムや事業活動そのものともいえます。支援団体や企業による製品やサービスの提供は、どの程度の人を支援でき、顧客の満足度の定量化が測定可能であれば、質的には異なるものの、インパクトを測っているともいえます。売上高の継続的な拡大を顧客の高評価によるものであるとすれば、その高評価をどの様に測るのかということで、「インパクト」を生み出すプロセスへ繋げられるでしょう。つまり、最終的な評価のポイントを「製品やサービスの提供」にとどめるのではなく、それによる貢献を何らかの形で定量化し、累積的に評価する、という点が重要なのです。

次回は第4回 「社会的インパクト」を測る(後編)

インパクトを定義する際のプロセスについて、具体例を挙げてご説明します。