徳川家康に学ぶ資産運用

「人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくが如し」と徳川家康は遺訓に残しました。
また、人類で初めて、世界最高峰であるエベレストに登頂成功した、エドモンド・ヒラリーは、「Life's a bit like mountaineering(人生は登山のようなものだ)」と語ったといいます。確かに、人生は荷物を背負って遠き道を行く登山のようなものかもしれません。

実際の登山では、あたりまえですが、どの山に登るのかという「目標」を決め、頂上までの距離や高度差、コースタイムなどを調べますよね。このような下調べをしておけば、登っている時に疲れが溜まってきたとしても、「目標」の頂上まで、あと何キロ、あと何時間ということがわかりますので頑張ることができるでしょう。逆に「目標」がなければ、あとどれくらい頑張ればいいのかわからず、途中でリタイアしてしまうかもしれません。

これは、人生においても同様で、「目標」があるからこそ頑張れることがありますよね。

例えば、憧れの場所に旅行で行きたい、家を建てたいといった「目標」があれば、無駄遣いを我慢してお金を貯められるということもあるでしょう。まず重要なのは具体的な「目標」をたてることではないでしょうか。

次に重要なのは、その「目標」を達成したいのは「いつ」なのか、「いくらくらい」必要なのかを決めることです。そうすれば、これから資産形成を始める方であれば、毎月どれくらいの金額を貯めたらよいのかが見えてきます。その時に預金で積み立てていくだけでは不足が生じるようであれば、利回りを上げるために資産運用を検討してみる必要があるかもしれません。現在まとまった資金がある方でも、運用をうまく活用すれば、高い「目標」であっても達成確率を高めることができるのではないでしょうか。

資産運用というと不安に思われる方も多いと思いますが、「目標」が明確であれば必要な金額に達するためのリターンだけを求めれば良いので、過度なリスクをとってしまう恐れも少なくなると思われます。また、運用をしていると、資産価格の下落がつきものですが、成し遂げたい「目標」が明確で、「いつ」まで置いておくことができるかがわかっていれば、投げ売りを防ぐことにも繋がりそうです。

この「目標」を決めて資産運用を行なうことを、「ゴールベース」といいます。米国での調査によると、金融危機が起きた時にも、この「ゴールベース」の実践は、非合理的な判断を防ぎ、適切な投資行動をとるために効果的であったといわれています。(下図ご参照)

2008年金融危機時における行動の違い

2008年金融危機時における行動の違いの図

(出所)大庭昭彦「我が国の資産運用の質的向上に向けて」『月刊資本市場』 No.375,2016.11, p.24-33より野村アセットマネジメント作成
将来の市場等の値動きや投資成果を示唆または保証するものではありません。

徳川家康の遺訓には他にも「勝つことばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる」とあります。資産運用には下落はつきものです。途中では一時的に「負くる(下落する)」こともあると知り、下落時にあわてないようにしておくことも大事でしょう。さらに遺訓には「急ぐべからず」とも書かれています。「目標」達成のためには、短期的に大きな上昇を狙ったハイリスク・ハイリターンな運用とせず、「急がず」に「目標」に合わせたリスクを抑えて長期運用を心がけることが肝心ではないでしょうか。

皆様も徳川家康の遺訓をご参考にしてみてはいかがですか。

徳川家康遺訓

人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくが如し。急ぐべからず。

不自由を常とおもへば不足なし。こころに望みおこらば困窮したる時をおもひ出すべし。

堪忍は無事長久の基、いかりは敵とおもへ。

勝つことばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。

おのれを責て人をせむるな。

及ばざるは過たるよりまされり。

出典:「東照宮御遺訓」