世界株式投資における勝ち組企業の見つけ方
2025年3月
ファンドマネージャーに聞いてみた!

この記事では、世界株式投資のプロである「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」のファンドマネージャー(運用者)に、世界株式への投資戦術をインタビューしていきます。
投資信託は、複数の投資家から資金を集めて、運用の専門家が債券や株式などに投資・運用する金融商品です。ファンドマネージャーは、それぞれ担当の投資信託があり、運用方針に基づいて投資判断を行ないます。投資信託は1人で運用するのではなく、チームで運用することが一般的です。ファンドマネージャーは、担当する投資信託について投資計画の策定や投資先の最終判断を行なう最高責任者です。
今回答えてくれるのは…
世界株運用のプロ!
野村アセットマネジメント株式会社
運用部(グローバルアクティブグループ) チーフ・ポートフォリオマネージャー
斎藤 芳暁
グローバル株式運用調査30年以上
斎藤さんの代表ファンドである「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」の運用で実践されている投資戦術を聞いていきます。
Q1.世界株式の魅力を教えてください。
世界には、収益性や成長率が高く、投資対象として魅力的な企業が存在することです。
アメリカに代表されるような世界の魅力的な市場では、いわゆる「勝ち組」と呼ばれる企業が生まれやすいという特徴があります。その市場で生まれた圧倒的なシェアを誇る企業や、圧倒的な収益性を実現する「勝ち組」企業へ投資できる点が、世界に目を向けて投資する1番大きな魅力だと思いますね。

Q2.どのようにして「勝ち組」企業を選定していますか?
「野村未来トレンド発見ファンド」のチームでは、企業の価値は将来的に企業が生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価しています。
企業が事業を運営するうえで生じるお金の流出入を指します。企業のキャッシュフローは、将来の成長や安定性を判断する指標の1つです。
将来得られるお金の価値を現在の価値に換算したものです。

また、世界中の企業を全て調査するのは現実的ではないですよね。だから、魅力的な成長が期待できるテーマを選別し投資ユニバースを絞り込むことで、効率的に調査することが大切になってくる。
今運用しているファンドでは中長期での成長が期待できる複数のテーマを設定することで調査対象を絞っています。たとえば「IoT/生産回帰」というテーマであれば、テクノロジーを活用した生産体制の効率化/自動化やグローバリゼーションの巻き戻しの動きに着目して調査対象企業を絞り込んでいきます。
テーマごとに「スペシャリスト」と呼ばれる担当者を配置して、各テーマ固有の成長ストーリーから中長期的に恩恵を受けると考えられる銘柄を業種横断的に発掘/調査していきます。
2025年から「野村未来トレンド発見ファンド」の最終意思決定者に就任された斎藤さんですが、最終判断はどのように行ないますか?
私が一人で投資判断をするというより、チーム全員で各テーマのスペシャリストが考えたシナリオについてディスカッションして決めています。
…もちろん責任は私がとるんですけど(笑)。
チームで運用する良さを教えてください。
「野村未来トレンド発見ファンド」の場合は、同じ企業でも複数のテーマスペシャリストが異なる視点で企業を評価することで、市場とは異なる成長ストーリーを見つけられることがあります。
たとえば2010年代半ばごろまで、アマゾンはeコマースの勝ち組企業という捉え方をされていました。しかし、当時はまだ初期段階でしたが、クラウドサービスの提供企業として再評価することで、異なる成長ストーリーに注目することができたんです。
アメリカで小売業を展開するウォルマートなどもそうです。
通常、ある会社が消費のトレンドを知りたい時はクレジットカード会社から買ったデータを分析することが多いのですが、クレジットカード会社が出してくるデータは1ヵ月くらい遅れてしまいます。一方、自社でデータを持っているウォルマートは、リアルタイムで何がいくらで売れているのか分かる。そのデータを使って広告ビジネスも展開しているので、小売企業として見た場合と、保有している膨大なデータを活用することで期待される中期的な成長余力に注目した場合とでは、同じウォルマートでも評価が大きく変わってくるんですよね。
異なるテーマスペシャリストが、1つの企業を複数の視点で多面的に見ることで、市場では見逃されているような成長シナリオを発見できることがあります。
*記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。
Q3.投資をする時に大切にしていることを教えてください。
現在の競争優位性が「偶然」ではなく「合理的な戦略」によって構築されたと判断でき、今後10~15年といった長期に渡って魅力的なキャッシュフローを生み出すことのできる企業を見つけていくことが大切だと思います。
具体例を教えてください。
具体例は沢山あります。
たとえば、とあるクリーニング屋さん。
ホテルや空港といった企業の制服をクリーニングしているのですが、ただ洗濯しているわけではないんです。「制服は作業着ではなく、従業員のロイヤルティや使命感を高めることができる」という信念を持っている。この企業は、自社を「クリーニング屋」ではなく「ユニフォームカンパニー」と定義し、創業時から「The Spirit is The Difference」という本にまとめられた考え方が、社員に共有され、従業員は業務に対して高い使命感を持っています。

キャッシュフローを安定的に長い間生み出して、競争にも勝っていく企業は単に技術を持っているだけではなくて、明確なミッションを意識していることが多いと思います。そういう定性面にも注目しながら銘柄を選んでいますね。
投資で成功するのは、市場と自分たちの想像する世界の間にギャップがある時です。どんなに魅力的な成長ストーリーや技術革新の話でも、既に市場に織り込まれてしまっていたら、ファンドに超過収益は生まれません。そのギャップにいち早く気が付くことが大切です。
たとえば、自動車メーカーのフェラーリを例に挙げると、ほとんどの人がフェラーリをトヨタやメルセデスと比べたりする。だけど、フェラーリが持っている最大の強みはブランド力で、実はバッグなどで有名なエルメスのように、ラグジュアリーブランドとして評価するべきだと気が付いたことがありました。
*記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。
ファンドのリターンからベンチマーク(株価指数など、ファンドのパフォーマンスを比較するための基準となる指標)のリターンを引いた分の利益を指します。
Q4.株式の保有/売却を検討する時、何を判断材料にしていますか?
判断材料として、主に3つのシナリオがあります。
1つ目は、投資先の企業に期待していたものが全部達成された場合。2つ目は、期待していたように企業が成長しなかった場合。このような場合、売却を検討することもあります。3つ目は、市場環境自体が大きく変わってしまって、市場のリスク許容度が低下した場合。市場が短期的な収益しか見ていない環境下では、長期的な成長を期待して保有している銘柄の比率を下げることもあります。
投資家や金融機関などの市場参加者が、市場の変動やリスクに対してどれだけ受け入れられるかを示す指標です。
Q5.アクティブファンドの魅力を教えてください。
インデックスファンドとは、指数(インデックス)など、あらかじめ定めた目標(ベンチマーク)に連動する運用成果を目指すファンドを指します。一方、アクティブファンドはベンチマークを上回る運用成果を目指すファンドのことをいいます。ベンチマークを定めていないアクティブファンドもあります。
インデックスファンドとアクティブファンドが目指す値動きのイメージ

インデックスファンドとアクティブファンド、それぞれに同一のベンチマークが設定されている場合の目指す値動きを表しています。(作成)野村アセットマネジメント
インデックスファンドはコストが安い傾向がありますし、特定の市場へ投資するには有益なものだと思っています。そして、「投機」や「ギャンブル」ではなく「投資」という視点で考えると、インデックスファンドへ投資するにしても、アクティブファンドへ投資するにしても、長期投資が重要だと考えています。
しかし、長期で投資する間に市場環境が大きく変わることも十分想像されますよね。市場の下落局面では、投資家が不安になるマイナスなニュースが増えてしまう。
相場変動に左右される投資家心理

上記はイメージ図です。(作成)野村アセットマネジメント
アクティブファンドはファンドマネージャーが投資哲学を持って運用しているので、最初に投資家と投資哲学を共有してから保有していただくことができる。仮に市場環境が変化しても、ファンドマネージャーの投資哲学や戦略を定期的に情報発信することで、投資家が長期投資をするための大きな力になると考えています。
今回のインタビューでは、世界株式の魅力や長期投資の重要性についてお伝えしました。
信頼できる運用会社や投資哲学に共感できるファンドマネージャーが運用するファンドを探してみてはいかがでしょうか。野村アセットマネジメントでは、運用担当者のご紹介やファンド・レビュー・レポートを公開しています。