世界株式を運用するファンドマネージャーの1日とは?

2025年3月

ファンドマネージャーに聞いてみた!

この記事では、世界株式投資のプロとして活躍するファンドマネージャー(運用者)の素顔に迫ります。

投資信託は、複数の投資家から資金を集めて、運用の専門家が債券や株式などに投資・運用する金融商品です。ファンドマネージャーは、それぞれ担当の投資信託があり、運用方針に基づいて投資判断を行ないます。投資信託は1人で運用するのではなく、チームで運用することが一般的です。ファンドマネージャーは、担当する投資信託について投資計画の策定や投資先の最終判断を行なう最高責任者です。

今回答えてくれるのは…
世界株運用のプロ!

野村アセットマネジメント株式会社
運用部(グローバルアクティブグループ) チーフ・ポートフォリオマネージャー

斎藤 芳暁
グローバル株式運用調査30年以上

Q1.これまでのキャリアを教えてください。

1994年に野村證券投資信託委託(現:野村アセットマネジメント)に入社しました。途中、1997年から1年間イギリスへ留学した時期を除いて、ずっとグローバル株の運用に携わっています。2011年から2016年は当社のイギリス拠点で運用していて、2016年から「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」のチームに入り、2025年より最終意思決定者に就任しました。

Q2.ファンドマネージャーを志したきっかけを教えてください。

元々、投資がすごく好きだったんです。私が学生時代の頃はインターネットが普及していなかったので、証券会社の方に直接電話で注文して日本株などに投資をしていました。

当時と比べて今はインターネットも普及しているので、ファンドマネージャーと個人投資家が得られる情報自体のギャップは大きくないように思います。それでも運用成果にギャップが生まれる原因は、情報の解釈の仕方だと考えています。

学生時代、勉強したことを教えてください。

ウォーレン・バフェットやフィリップ・フィッシャーなど、今でも有名な投資家の本を読んでいました。大学は商学部で、金融工学のゼミに入っていたので、クオンツについても学びました。投資はギャンブルとは違って、様々な資本市場の理論に支えられているということもそこで学びましたね。

数学的な手法や統計的なアプローチを用いて市場や金融商品、投資戦略を分析し、その分析結果に基づいて投資判断を行なう運用スタイルを指します。

アクティブファンドのファンドマネージャーになった理由を教えてください。

大学では、市場の効率性を前提にした様々な資本市場の理論を学んでいました。それに対して、ウォーレン・バフェットやフィリップ・フィッシャーの世界はちょっと違う。だから、「インデックスとアクティブ、どちらが良いのか?」というのは、学生時代にもよく考えていました
でも、実際に運用していて感じるのですが、市場には非効率な部分が確かにあるんです「世界株式投資における勝ち組企業の見つけ方」でも申し上げた通り、アマゾンは小売ではなくAI関連の銘柄としてトレードされるはずだということに市場より早く気が付けば収益が生まれる。フェラーリも自動車メーカーではなくラグジュアリーブランドの企業として捉えれば評価が変わる、というように。

インデックスファンドとは、指数(インデックス)など、あらかじめ定めた目標(ベンチマーク)に連動する運用成果を目指すファンドを指します。一方、アクティブファンドはベンチマークを上回る運用成果を目指すファンドのことをいいます。ベンチマークを定めていないアクティブファンドもあります。

インデックスファンドとアクティブファンドが目指す値動きのイメージ

インデックスファンドとアクティブファンドが目指す値動きのイメージの図

インデックスファンドとアクティブファンド、それぞれに同一のベンチマークが設定されている場合の目指す値動きを表しています。(作成)野村アセットマネジメント

*記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。

Q3.1日のスケジュールを教えてください。(平日、休日)

〈平日の場合〉

時差の関係で、朝はアメリカ、夕方は欧州の企業と1日あたり平均3~4件のミーティングをします。企業の経営者やIR担当者だけでなく、アナリストの方とディスカッションをすることも多いですね。
それ以外の時間で、投資先として有力な企業があれば数日かけて数字に落として業績モデルを作り、チームでディスカッションします。

アナリストの仕事については、「調査のプロに聞いてみた!投資先企業の見つけ方(前編)」をご覧ください。

現地視察などにも行きますか?

12人のチームで運用しているので、それぞれが複数回、現地へ行って調査しています。平均すると年2回くらい行きます。10年くらい前は、四半期に1度くらい現地視察していたのですが、リモートが普及した今はIR担当者の方が自宅からミーティングしてくださるなど、オンラインでの機会が増えています。効率的になったことで、出張の回数は減ったかもしれませんが、ミーティングの件数は増えたと思います。

〈休日の場合〉

投資がすごく好きなので、休日も大して変わらなくて…(笑)
自分が投資したくなるようなファンドを探しています。投資用の不動産を見に行くこともありますね。

どのようなファンドを探しているのですか?

世界株式ファンドでは組入比率の低い傾向がある日本株式のファンドや、コモディティを組み入れたファンドなどは分散投資に効果的ではないかと考えながら見ています。

石油・大豆など、産業や生活に必要なモノの総称です。具体的には、エネルギー、貴金属、農産物、非鉄金属などの各種商品を指します。

他にも、分散できる投資対象はありますか

通貨ですね。
世界株式を投資対象とする場合、アメリカの比率が高くなるんですよね。そうなると、通貨は米ドルの比率が増えていくので、ユーロや資源国通貨などを組み入れることでも分散が図れると思います。

「コモディティ通貨」とも呼ばれ、資源を主な輸出品としている国の通貨を指します。

Q4.ご自身はどのような性格ですか?

‥‥難しいですね(笑)。
投資することがすごく好きなんです。できるだけ論理的に考えて、判断するというのは自分の性格に合っていて
だから、あまり閃きみたいな感じで投資することはありません。そういう能力が優れている人は、短期売買で儲かるかもしれないんですけど、自分の場合は将来の中長期的なキャッシュフローを予想し、それを積み上げて評価するというスタイルを取っています。

投資以外に趣味はありますか?

ワインも好きです。勉強したくて、学校に行っていた時期もありました。
…1度だけ、ワインに投資したこともあります(笑)

Q5.休日も運用するほど、投資を好きになったきっかけを教えてください。

大学で勉強をしている時に、何かの授業で「Financial independence(経済的自立)」という言葉が出てきました。それがきっかけで、株式投資は社会の安定や平和に貢献できるのでは、とも考えるようになりました。
最近は別の意味で使われることもありますが、私が学生時代に感じた「Financial independence」は、お金に支配された意思決定は、望まない結果に繋がることも多いのではないかということでした。たとえば、「本当はやりたい仕事があるけれど、お金が必要だから違う仕事を選ぶ」といったように。
世界では様々な問題が起きていますが、大抵お金に絡んでいるように思います。資産運用を通じてある程度の資産を持つことができれば、そして誰もがお金から独立した意思決定をできるようになれば、世界の平和や安定にも繋がるかもしれない…と。

「Financial independence」を実現する上で、個人投資家が気をつけるべきことを教えてください。

資産を形成するには、長期投資がすごく大事だと思います。
「Financial independence」は、幸福度を上げていくためにすごく大事な視点だと思います。そして、資産運用はそれに貢献できると信じています。そのためにも、私達ファンドマネージャーが長期的なリターンを上げることで投資家の皆様の期待に応えていきたいと考えています。

今回のインタビューでは、活躍するファンドマネージャーが個人で投資している資産やプライベートについてお伝えしました。
信頼できる運用会社や投資哲学に共感できるファンドマネージャーが運用するファンドを探してみてはいかがでしょうか。野村アセットマネジメントでは、運用担当者のご紹介ファンド・レビュー・レポートを公開しています。