長期投資の「長期」とは何年?メリットと併せて解説

長期投資とは、金融資産を長期間保有して成長や配当を得る投資方法です。
投資をはじめたいと思っても、購入や売却の時期が投資成果に大きく影響するため、なかなか踏み出せない方が多いのではないでしょうか。
このコラムでは、株式等を長期保有することで得られる効果を過去の事例から検証していきます。

長期投資のリターンは年率4~8%!?日本、米国の株式市場の振り返り

過去の株式市場がどのような値動きをしていたのか期間別にみていきましょう。

下図は日本株式の代表的な指数であるTOPIX(東証株価指数)の推移です。
左のグラフは算出可能な1949年からの推移を示しています。約75年間で110倍を超える上昇で、年率平均リターンは約7%でした。次に右のグラフは過去20年間を示していますが、約2倍に上昇し、年率平均リターンは約4%でした。

日本株式(TOPIX)の推移

期間:1949年5月末~2023年12月末、月次

日本株式(TOPIX)の推移の図

・対数目盛とは、数値が等間隔に並ぶ目盛とは異なり、10、100、1,000などと桁数ごとに区切られる目盛のことです。極端に範囲の広いデータを扱う際に用いられます。

・網掛けは内閣府経済社会総合研究所発表の景気後退期を示しています。

・全て指数リターン。

(出所)ブルームバーグ、内閣府経済社会総合研究所()のデータを基に野村アセットマネジメント作成

下図は米国株式の代表的な指数であるS&P500種株価指数の推移です。
左のグラフは算出可能な1927年からの推移を示しています。96年間では約270倍・年率平均リターン約6%、過去20年間では、約4倍・年率平均リターン約8%でした。
日米の株式市場を振り返ると、グレーで示している通り景気後退期は何度もありました。バブル崩壊や金融危機などによる株価の暴落局面があったのも事実ですが、長期にみれば値上がりした相場環境でした。

米国株式(S&P500種株価指数)の推移

期間:1927年12月末~2023年12月末、月次

米国株式(S&P500種株価指数)の推移の図

・網掛けは全米経済研究所発表の景気後退期を示しています。

・全て指数リターン。

(出所)ブルームバーグ、全米経済研究所のデータを基に野村アセットマネジメント作成

なぜ長期投資が効果的なの?

なぜ長期投資が効果的なのか、2つの視点でみていきましょう。

①リターンランキングからみる長期投資の効果(日本・米国)

下図は日米の株式市場における過去20年間の1日のリターンランキングです。それぞれのランキング上位をみると、同じ色で示している通り株価が大幅に下落しているタイミングに、大幅な上昇を記録していることが多く、短期的な下落局面で「売り時」を判断すると結果的に大きく上昇した日を見逃す可能性もあります。

リターンランキング

期間:2003年12月末~2023年12月末、日次

TOPIX(東証株価指数)

下落率(上位5日)

1 2008/10/16 -9.5%
2 2011/03/15 -9.5%
3 2008/10/08 -8.0%
4 2008/10/24 -7.5%
5 2011/03/14 -7.5%

上昇率(上位5日)

1 2008/10/14 13.7%
2 2008/10/30 8.3%
3 2016/02/15 8.0%
4 2020/03/25 6.9%
5 2011/03/16 6.6%

S&P500種株価指数

下落率(上位5日)

1 2020/03/16 -12.0%
2 2020/3/12 -9.5%
3 2008/10/15 -9.0%
4 2008/12/01 -8.9%
5 2008/09/29 -8.8%

上昇率(上位5日)

1 2008/10/13 11.6%
2 2008/10/28 10.8%
3 2020/03/24 9.4%
4 2020/03/13 9.3%
5 2009/03/23 7.1%

使用した指数はすべて配当込み。

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

資産運用において、大きな損失を避けることは大切です。たとえば、1万円の株価が50%下落し5,000円になった場合、50%上昇しても、7,500円にしかなりません。5,000円から1万円まで回復するには、下落分の2倍である100%の上昇が必要です。では、大きく上昇した日を見逃すとどのような影響があるのでしょうか。下図は過去20年間、日本と米国のそれぞれの株価が大幅な上昇をした日に投資をしていなかった場合のパフォーマンスを保有条件別に示しています。例えば2003年12月から20年間投資している中で、継続して保有した場合と上昇率上位10日間分を保有していなかった場合を比べると、日本・米国ともに2倍以上リターンの差が出ています。つまり、株価が大幅上昇したタイミングに保有していなかった場合は、良い投資成果を得ることはできず長期投資の継続が優位だったことが分かります。

保有条件別のリターン比較

期間:2003年12月末~2023年12月末、日次

日本株式(TOPIX)

日本株式(TOPIX)の図

米国株式(S&P500種株価指数)

米国株式(S&P500種株価指数)の図

・2003年12月末を10,000ポイントとして投資を開始した場合。

・使用した指数はすべて配当込み。

税金・手数料などは考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。ファンドの運用実績ではありません。過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

これらの要因を踏まえると、投資を続けるためには、一時的な変動に惑わされず、長期の視点で資産を保有することが効果的といえそうです。

②保有期間からみる長期投資の効果(世界株式)

次に世界の株式市場についてもみていきましょう。下図は世界株式に投資した場合の保有期間別のリターンの振れ幅とリターンのばらつきを示しています。

世界株式に投資した場合の保有期間別年率リターンの振れ幅

期間:1987年12月末~2023年12月末、月次

世界株式に投資した場合の保有期間別年率リターンの振れ幅の図

(使用した指数)世界株式:MSCI ACWI(税引前配当込み・米ドルベース)

上記は投資開始月を1ヵ月ずつずらして、1年間、5年間、10年間、15年間、20年間、世界株式に投資した場合のシミュレーションです。税金・手数料などは考慮しておりません。過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

保有期間別の年率リターンの分布

期間:1987年12月末~2023年12月末、月次

1年

保有期間別の年率リターンの分布1年の図

10年

保有期間別の年率リターンの分布10年の図

20年

保有期間別の年率リターンの分布20年の図

(使用した指数)世界株式:MSCI ACWI(税引前配当込み・米ドルベース)

上記は1987年12月末~2023年12月末の期間において、1年間、10年間、20年間世界株式に投資・保有した場合のシミュレーションです。税金・手数料などは考慮していません。過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

投資期間が短期間ではリターンの振れ幅が大きく、15年・20年と長期になるほどリターンの振れ幅が小さくなることが分かります。一般的に投資タイミングによって投資結果が大きく変わりますが、1987年12月末から1年間、5年間、10年間、15年間、20年間の保有期間でみてみると、15年間以上保有していた場合は、どのタイミングで投資を始めてもマイナスとなることはありませんでした。長期の投資においては明確な期間の基準はありませんが、投資を開始するタイミングを迷うよりも、なるべく早く投資を開始して時間を味方につけることも有効だといえそうです。
また、保有期間別の年率リターンの分布をみても分かる通り、長期間ほどプラスのリターンが実現した回数が多く、ばらつきの少なさも目立ちます。このように、投資期間が長くなるほど投資収益が安定化するのも長期投資のメリットともいえるでしょう。さらに長期投資では配当などの収益を再投資することで複利効果も期待できます。

長期投資の有効性を支える理由は?

これまで、過去のデータを基にお伝えしてきました。資産形成においては、成長が期待できる資産に継続投資をすることが重要です。今後の世界経済の拡大とけん引する要因を確認しましょう。

①世界経済の拡大

世界の経済規模と世界株式指数の推移は下図の通りです。
世界の経済規模は成長し続けており、2000年は総額約34兆米ドルでしたが、2022年には約100兆米ドルまで拡大しています。それに伴い、世界株式も大きく上下しながらも、右肩上がりの上昇が続いています。世界人口は今後も増加傾向にあると共に消費も拡大し、世界経済は成長を続け2028年には約134兆米ドルになると予想されています。

世界経済規模と世界株式の推移

世界経済規模と世界株式の推移の図

(1987年12月末=100)

(期間)世界株式:1987年12月末~2023年12月末 世界経済規模:名目GDP、1987年~2028年、2023年以降はIMF予測。

(使用した指数)世界株式:MSCI ACWI(税引前配当込み・米ドルベース)

(出所)IMF「World Economic Outlook Database, October 2023」、ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

②企業の投資とイノベーション

経済成長の背景には企業が新しい製品やサービスの開発に投資し、また革新的なアイデアや製品を生み出すイノベーションが重要な役割を果たしています。これらの技術革新により、企業は市場での競争力を高め、結果として経済成長に貢献しています。
企業の時価総額は、全体の市場価値を表すもので株価と密接に関連していますが、世界の時価総額ランキングの変遷をみてみると、2003年末と現在(2023年末)では上位ランキングの企業が大きく変わっており、2023年では、アップルやアルファベット(グーグルの親会社)などの企業に代表されるビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、AI (人工知能)などを中心としたイノベーションが、新たな産業の創出や、人口増加による経済活動の活性化に寄与し、世界経済の成長をけん引する要因になっていると考えられます。また2003年末に1位だったゼネラル・エレクトリックの時価総額は約3100億米ドル、現在1位のアップルの時価総額は約3兆米ドルと約10倍にもなっており市場全体が拡大しています。

世界株式の時価総額上位10銘柄

2003年末 2023年末
1位 ゼネラル・エレクトリック(米国) アップル(米国)
2位 ファイザー(米国) マイクロソフト(米国)
3位 エクソン・モービル(米国) アルファベット(米国)
4位 マイクロソフト(米国) アマゾン・ドット・コム(米国)
5位 シティグループ(米国) エヌビディア(米国)
6位 インテル(米国) メタ・プラットフォームズ(米国)
7位 BP(英国) テスラ(米国)
8位 HSBCホールディングス(英国) ブロードコム(米国)
9位 ボーダフォン・グループ(英国) JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(米国)
10位 シスコシステムズ(米国) ユナイテッドヘルスグループ(米国)

(使用した指数)世界株式: MSCI ACWI(米ドルベース)

*記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。

(出所)FactSetのデータを基に野村アセットマネジメント作成

長期投資の必要性を感じる人の割合は?

金融庁が実施した意識調査によると、投資未経験者の「資産運用に関するイメージ」についての回答では、「商品を価格変動に関わらず長期間保有する」と選択した人が19.5%でした。一方、投資経験者の回答は44.6%と、すでに投資を経験している人の中には長期投資について必要性を感じている人が多いようです。リスクと上手に付き合うためには、長期投資は選択肢の一つといえるでしょう。

(出所)金融庁「リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査結果(令和3年6月30日)」(https://www.fsa.go.jp/

将来の資産形成や、老後資金の準備として資産運用を検討する際、「リスクが怖い」、「元本の保証がない」ことを理由に投資に踏み込めなかったという方も、時間を味方につけて長期間にわたり投資を継続するという選択肢を検討してみませんか?