職場つみたてNISAとは?~先輩社員に相談してみた~

教えて先輩! 職場で学べる資産形成 「職場つみたてNISA」ってなんですか?

「職場つみたてNISA」とは、職場を通じてNISAを利用した資産形成ができるよう、事業主などが役職員等の利用者を支援する福利厚生制度です。
このコラムでは職場つみたてNISAの活用について、資産形成に興味がある社員が資産運用に詳しい人事部の先輩に相談している様子をお届けします。

登場人物

  • 後輩社員A:30歳

    後輩社員A:30歳

  • 先輩社員B:40歳

    先輩社員B:40歳

職場つみたてNISAってどんな福利厚生なの?

最近、将来のために預貯金以外で何かできることないかなって考えているんです。
うちの会社には「職場つみたてNISA」っていう福利厚生制度があるのを知っている?私はこの福利厚生をきっかけに資産形成を始めたよ。
職場つみたてNISAって知らなかったです。どんな制度なんですか?最近、NISAをやった方がいいってよく聞くんですが、詳しいことは分からなくて…。
まず、NISAは少額投資非課税制度というもので、その名の通り少額から投資ができて、利益が非課税になる制度なんだよ。そもそも前提として、投資をして売却する時に利益が出ていると約20%課税されることは知ってる?
投資をしたことがないので、税金のことは全く分かりません…。
通常、投資金額より売却額が上回る、つまり売却時に利益が出ている場合に課税されるんだよ。もちろん損失が出ていた場合にはそもそも課税されないんだけどね。あとは投資した金融商品を保有している間に配当金や分配金が支払われる場合も、通常は課税されて税引き後の金額を受け取るんだけど、NISA口座で保有していると課税されずに受け取ることができるんだよ。

約20%※1の税金がNISAの活用で0%に!
~運用益が100万円の場合~

約20%※1の税金がNISAの活用で0%に!~運用益が100万円の場合~の図

上記はイメージ図です。

※1運用益に対して20%の税金が課税される前提で計算しています。

(出所)金融庁()の資料などを基に野村アセットマネジメント作成

100万円利益が出たら通常なら約20万円も税金が引かれてしまうのに、それを非課税で受け取れるのは魅力的ですね。だから、みんなやった方がいいよ、っていうのか!
ところで、直接金融機関でNISAを申し込む場合と「職場つみたてNISA」を利用する場合とは何か違いがあるんですか?
職場つみたてNISAは福利厚生制度の1つだから、職場を通じてNISAを利用した資産形成を支援する仕組みを会社が従業員に対して用意しているってことなんだよ。

職場つみたてNISAとNISAの違い

  職場つみたてNISA NISA
拠出方法 給与天引きまたは預貯金口座・証券口座等からの引き落とし 預貯金口座・証券口座等からの引き落とし
奨励金 奨励金が設定されている場合あり 奨励金なし
投資できる金融商品 事業主等が契約したNISA取扱金融機関(銀行・証券会社等)が選定する金融商品 NISA口座を開設した金融機関(銀行・証券会社等)が取り扱う金融商品

*拠出方法や奨励金の有無は勤務先ごとに異なるため、人事部・総務部など職場つみたてNISAに係る担当部署にご確認ください。

(出所)金融庁()、日本証券業協会「「職場つみたてNISA」について」()の情報を基に野村アセットマネジメント作成

なるほど。職場を通じてNISAを始めることができるってことなんですね。職場つみたてNISAという言葉の「つみたてNISA」というのはどういうことなんですか?
NISA口座で「積立投資」という方法を使って、資産形成するってことだよ。毎月、同じ金額を同じ商品に投資していくというのが一般的だね。積立投資は、価格が高い時には数量を少なく、価格が安い時には数量を多く購入することになるから、自動的に買うタイミングを分散してリスクを低減することが期待できるんだよ。

積立投資によるリスク低減効果についてはコラム「少額から始められる!積立投資ってなに?」で解説しています。

僕は毎月お給料を使い過ぎないように一部を定期預金に振り替えてますけど、預金は金利が低いので、どうしようか考えていたんです。先輩は投資を始めてるってことですよね?僕も投資に興味はあるものの、なかなか踏み出せなくて…。
私がこんなに詳しくなれたのは、職場つみたてNISAを始めるようになったのがきっかけだけど、その理由は金融機関の方が会社に来て、金融や投資に関する知識やライフプランの立て方などを教えてもらうことができたからなんだよ。
なんとなく銀行や証券会社に相談しに行くのってハードルが高かったんですけど、会社で学べるのであれば始めやすい気がします。
私は人事部にいて、社員に何をサポートしてあげるべきかってよく考えているんだけど、資産運用の必要性なども注目されている中で、どうしたら投資に対するハードルを低くしてあげられるかってことを考えた時に、こういう待遇を受けられるのはメリットになるんじゃないかなって思うんだ。うちの会社の場合、職場つみたてNISAは会社が契約する銀行などで口座を開いて、銀行口座からの引き落としで自動的に購入していくことができるんだ。会社によっては給与天引きにできるところもあるの。この仕組みを作っておくことで、給料から先取りで投資・貯蓄に振り分けておくことができるよね。残ったお金を投資に回そうと思っていても、なかなかそうできないケースが多いからね。
分かります。残ったお金を預金に回そうと思って、ほとんど貯められなかったです。さすがにまずいなと思って、定期預金の積立を始めたので…。
会社によっては奨励金が給付される※2こともあるみたい。うちの会社は奨励金の給付はないけど、これは会社にとっても従業員にとっても魅力的な制度だと思うから、導入されるとさらに嬉しいんだけどね。※3

※2奨励金等の対応は会社毎に異なりますので、ご勤務先にご確認ください。

※3給付された「奨励金」は賃上げ促進税制の対象となり、事業主等は一定割合を法人税額(または所得税額)から控除できます。(出所)日本証券業協会「職場つみたてNISAのご案内」(

実際に投資するってなったら、投資先はどうやって探したらいいんですか?
投資先は会社が提携している銀行や証券会社などのNISA取扱金融機関が取り扱っている商品の中から選ぶことになるよ。
僕は投資に詳しくないからどんな商品を選んだらいいのか分からないんですが、あまりリスクは取りたくないと思ってます。
金融機関の方が来た時にリスクを抑える3つのコツは「じっくり」「コツコツ」「バランスよく」と教えてもらったよ。「じっくり」は投資の期間を長期で考えて時間を味方につけること。「コツコツ」はさっき話した通り購入するタイミングを分けて積み立てていくこと。「バランスよく」は値動きの異なる複数の資産に分散して投資することなんだ。
値動きの異なる複数の資産を併せ持つって、なんだか難しそうですね。それに投資って値上がりしそうなものに集中投資して利益を出すっていうイメージが強かったんですけど、なんで分散が大事なんですか?
実は私たちの公的年金は運用されているって知ってる?私たちの年金を管理しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という機関が運用しているんだけど、国民に支給するための大事な年金の原資だから、長期的な観点からの安全かつ効率的な運用を行なうことを目標として、下図のように国内外の株式・債券などに分散投資しているんだよ。

GPIFの基本ポートフォリオ(2020年4月以降)

基本ポートフォリオ(2020年4月~)資産構成割合の図

(出所)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)「2023年度の運用状況」()を基に野村アセットマネジメント作成

僕たちが将来受け取る公的年金も分散投資で運用されているんですね。僕もリスクを抑えた運用をしたいと思っているので、GPIFの資産配分は参考になりますね。
そうだね。実際、2001年度以降の運用状況を見るとリターンは年率約4%で、驚きなのは今の運用資産額の約225兆円のうち6割近くが20年強で積み上げてきた運用の収益なんだよ。分散投資でリスクを抑えながら長期で実績を積んだ結果だね。

2020年4月以前の資産配分割合は上図の基本ポートフォリオとは異なります。

GPIFの累積収益額
(期間:2001年度~2023年度第3四半期)

GPIFの累積収益額(期間:2001年度~2023年度第3四半期)の図

収益率及び収益額は運用手数料等控除前です。

2001年度から2019年度の収益率は、市場運用を行なっている資産(市場運用分)の修正総合収益率と財投債の収益率をそれぞれの投下元本平均残高等で加重平均して算出しています。2020年度以降の収益率は、時間加重収益率です。

収益率(年率)は、前年度までの各年度の収益率及び2023年度第3四半期までの収益率を用いて幾何平均により算出しています。

累積収益額は、前年度までの各年度の収益額に、2023年度の第3四半期までの収益額を加えたものです。

上記数値は速報値のため、業務概況書等において、変更になる場合があります。

(出所)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)「2023年度の運用状況」()を基に野村アセットマネジメント作成

年率約4%という数字がすごいのかどうかよく分からなかったのですが、現在の運用資産の約6割が収益だっていうことに驚きました。僕も1つの資産だけに投資するのは心配なので分散投資でリスクを抑えながら運用を始めてみたいと思うのですが、初心者の僕には難しそうで…。
分散投資を初心者でも手軽に始められるのが投資信託なんだよ。NISAのつみたて投資枠※4を活用して投資する場合は、投資対象は金融庁の基準を満たした投資信託から選ぶようになっているんだ。長期・積立・分散投資に適したもので、なおかつ低コストの商品が選定されているんだよ。

※4職場つみたてNISAでは、事業主等とNISA取扱金融機関の契約に応じて、①つみたて投資枠のみ利用、②成長投資枠のみ利用、③つみたて投資枠・成長投資枠の併用、のいずれかとなります。詳しくはご勤務先にご確認ください。

ところでA君はどんな目的で資産形成したいの?
ぼんやりとしかイメージできてないですけど、将来の老後資金とか、子供ができた時の教育資金とかですかね。
せっかく始めるなら、目標を定めてから始めるといいよ。たとえば「老後資金2,000万円問題」って少し前に話題になったよね。仮に今から老後までに2,000万円準備するとして、毎月いくら積み立てていけばいいのか考えてみようか。A君は今30歳だから、60歳まで30年間の積立期間があったとして、運用しないで2,000万円貯めるためには毎月約5.6万円の積立が必要になるよね(2,000万円÷30年÷12ヵ月)。仮にさっき紹介したGPIFと同じ資産配分※5で過去30年間運用していたとしたら、2,000万円形成するために毎月いくら必要だったと思う?

※52020年4月以降の基本ポートフォリオ

運用しないと毎月5.6万円が必要だったから、運用していたら毎月4万円くらいですみますかね?
仮にGPIFと同じような資産配分で運用をしていたとして、過去のデータを使ってシミュレーションしてみると、毎月2万円積立投資を続けていたら、30年後に約2,000万円を達成できたんだよ。

資産分散※6した場合の積立投資
期間別シミュレーション
(期間:1994年3月末~2024年3月末、月次)

資産分散※6した場合の積立投資(期間:1994年3月末~2024年3月末、月次) の図

上記はシミュレーションであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。算出過程において税金・手数料などは考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。ファンドの運用実績ではありません。2024年3月末は積立をしていないものとします。

※6国内株式、外国株式、国内債券、外国債券の4つの資産を1/4ずつの割合で、各資産の月間リターンを基に毎月リバランス(相場変動などにより変化した投資比率を調整し、1/4ずつの割合を維持)を行なったものとして、野村アセットマネジメントが独自に計算。

(使用した指数)「国内株式」 配当込みTOPIX(「東証株価指数(TOPIX)(配当込み)」)、「外国株式」 MSCI-KOKUSAI指数(配当込み・円ベース・為替ヘッジなし)、「国内債券」 NOMURA-BPI総合、「外国債券」 FTSE世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース)

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

資産分散※6して積立投資した場合
期間別の毎月必要な積立額
(期間:1994年3月末~2024年3月末)

投資期間 毎月の積立額 最終評価額 (ご参考)
累積投資額
30年間 2.0万円 約2,021万円 720万円
20年間 3.9万円 約2,049万円 936万円
10年間 10.7万円 約2,000万円 1,284万円
2万円!?運用しない場合と比べて毎月の積立額が半分以下ですむんですか!
30年間で比べた場合はそうなるね。GPIFと同じように運用していたとしても、2,000万円の資産形成を達成するには、積立期間が10年間だと毎月10.7万円の積立が必要だけど、20年間だと毎月3.9万円、30年だと毎月2.0万円、と積立期間が長期になるほど、必要となる毎月の積立額は少なくなるから、早めに準備しておくことで、毎月の負担を抑えることが期待できるね。しかもNISAであれば、最終評価額と累積投資額の差額分の利益も非課税になるから、30年の場合は約260万円※7もの節税効果が期待できるんだよ。

※7運用益に対して20%の税金が課税される前提で計算しています。

約260万円も受け取れる額が変わるなんて、NISAで期待できる効果は大きいですね。将来のために定期預金に積み立てているのがちょうど2万円なので、その程度の金額なら無理なく始められそうです。
そうだね。大事なのは長期間続けることだから無理のない範囲で積立額を設定することだよ。余裕が出てきたら増額してもいいしね。それにNISAは途中で自由に引き出すことができるから、たとえば10年後に必要な教育資金を一部引き出すなど、ライフプランに合わせて準備していくことができるんだ。
なるほど。目標とする金額とそれが必要となる時期を設定して、そこから積立額を決めていけばいいんですね。
そうだね。まずは金融機関の方が来て説明会をする機会があるから、参加してみるといいよ。

職場つみたてNISAの特徴

安心
便利
簡単

(出所)日本証券業協会「職場つみたてNISAのご案内」()を基に野村アセットマネジメント作成