米国株式時価総額ランキングの変遷 ~新陳代謝の良い米国株式市場~

世界経済や景気の動向の変化をいち早く反映する市場の一つに株式市場が挙げられます。企業の時価総額は、その企業の市場価値を表すもので株価と密接に関連しています。このコラムでは、米国の株式市場がどのように成長を遂げたのか、また米国株式ファンドに投資するヒントを時価総額の変遷を見ながら紐解いていきます。

時価総額とパフォーマンスの推移

時価総額は株式市場から見た企業の価値や規模を図る指標で、「発行済株式数×株価」で算出されます。世界の株式市場の時価総額は、約30年間で8倍程度拡大し、構成比をみると、米国市場が世界の半分以上を占め、大きな存在として位置づけられています。

世界株式市場の時価総額構成比

世界株式市場の時価総額構成比の図

四捨五入により合計が100%にならない場合があります。

(使用した指数)世界株式: MSCI ACWI(米ドルベース)

(出所)FactSetのデータを基に野村アセットマネジメント作成

また、世界の時価総額ランキングの変遷をみてみると、1995年末と現在(2024年末)では上位ランキングの企業が大きく変わっており、特に90年代には日本の金融機関は、国際的な取引の中心になるなど世界市場で大きな存在感があり、日本の経済が世界の中心としての地位を確立していました。米国市場の成長の背景には、世界経済の拡大とイノベーション(技術革新)が大きく寄与しています。特に、コンピュータの普及やインターネットの商用利用開始など、イノベーションが新たな産業を生み出しました。「Windows95」「Google」「Facebook」「iPhone」などの登場が、企業の競争力を高め、経済や株価の成長に貢献してきました。2022年11月には対話型AI「ChatGPT」が登場し、新たな技術の進化が見られ時価総額が高い企業が入れ替わる中で、米国は常に新しいアイデアやイノベーションの発信地であることがわかります。

世界株式の時価総額上位10銘柄

1995年末 2024年末
1 ゼネラル・エレクトリック(米国) 1 アップル(米国)
2 AT&T(米国) 2 エヌビディア(米国)
3 エクソン(米国) 3 マイクロソフト(米国)
4 コカ・コーラ(米国) 4 アマゾン・ドット・コム(米国)
5 メルク(米国) 5 アルファベット(米国)
6 トヨタ自動車(日本) 6 メタ・プラットフォームズ(米国)
7 フィリップモリス(米国) 7 テスラ(米国)
8 ロイヤル・ダッチ石油(オランダ) 8 ブロードコム(米国)
9 日本興業銀行(日本) 9 台湾積体電路製造(台湾)
10 住友銀行(日本) 10 JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(米国)

*記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。

(使用した指数)世界株式: MSCI ACWI(米ドルベース)

(出所)FactSetのデータを基に野村アセットマネジメント作成

下図は世界株式と、米国株式の代表的な指数であるS&P500種株価指数の推移です。米国の株式市場は、さまざまな下落局面を経験しながらも、長期的に見ると上昇を続けてきました。このように企業が新しい技術を取り入れながら成長していることが、結果として企業の競争力を高め、米国株式のパフォーマンスを高める要因の一つとなっています。

世界株式と米国株式のパフォーマンス比較

世界株式と米国株式のパフォーマンス比較の図

1989年12月末を100として累積リターンを指数化。

*記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。

期間:1989年12月末~2024年12月末、月次

(使用した指数)S&P500種株価指数(配当込み・米ドルベース)、世界株式:MSCI ACWI(配当込み・米ドルベース)

(出所)ブルームバーグのデータ、各種資料を基に野村アセットマネジメント作成。

株式相場を先導する業種の移り変わり

長期的にみるとイノベーションとけん引役の主役の新陳代謝が、株価の持続的成長に繋がっている米国市場ですが、いわゆるテーマ相場に乗ると大きく上昇する一方で、調整局面の下落幅が大きいことも事実です。

下図はS&P500種株価指数の業種別指数の推移です。2000年のITバブル崩壊では情報通信関連株、2008年の金融危機(リーマン・ショック)では金融株が、収益悪化などにより大きく下落しました。

S&P500種の業種別指数の推移

S&P500種の業種別指数の推移の図

1990年12月末を100としてリターンを指数化。

期間:1990年12月末~2024年12月末、月次

(使用した指数)生活必需品:S&P500生活必需品株指数(米ドルベース)、ヘルスケア:S&P500ヘルスケア株指数(米ドルベース)、公益事業:S&P500公益事業株指数(米ドルベース)、情報技術:S&P500情報技術株指数(米ドルベース)、資本財・サービス:S&P500資本財・サービス株指数(米ドルベース)、エネルギー:S&P500エネルギー株指数(米ドルベース)、コミュニケーション・サービス:S&P500コミュニケーション・サービス株指数(米ドルベース)、一般消費財・サービス:S&P500一般消費財・サービス株指数(米ドルベース)、金融:S&P500金融株指数(米ドルベース)、素材:S&P500素材株指数(米ドルベース)

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成。

また、2022年からの3年間、業種ごとのパフォーマンスを見ると相場の先導役となる業種は毎年入れ替わっていて、同じ業種が勝ち続けていないことがわかります。

S&P500種の業種別指数の年間騰落率

S&P500種の業種別指数の年間騰落率 の図

期間:2022年は2021年12月末~2022年12月末、2023年は2022年12月末~2023年12月末 2024年は2023年12月末~2024年12月末

(使用した指数)生活必需品:S&P500生活必需品株指数(米ドルベース)、ヘルスケア:S&P500ヘルスケア株指数(米ドルベース)、公益事業:S&P500公益事業株指数(米ドルベース)、情報技術:S&P500情報技術株指数(米ドルベース)、資本財・サービス:S&P500資本財・サービス株指数(米ドルベース)、エネルギー:S&P500エネルギー株指数(米ドルベース)、コミュニケーション・サービス:S&P500コミュニケーション・サービス株指数(米ドルベース)、一般消費財・サービス:S&P500一般消費財・サービス株指数(米ドルベース)、金融:S&P500金融株指数(米ドルベース)、素材:S&P500素材株指数(米ドルベース)

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成。

新陳代謝の良い米国株式市場におけるファンドを選ぶヒント

これまでの米国の株式市場は活躍するさまざまな主役が入れ替わりながら、長期的な株価上昇に結びついています。その新陳代謝の良さや革新性により、収益が期待できる一方で、特定の企業やテーマに偏るとリスクが高まります。また、急成長している企業などの株式は市場の関心が高いため、決算や経済指標などが発表されると、売買が活発になり、その結果株価が大きく変動することで、短期的な利益を狙う投機的な取引も多くなる傾向があります。投資信託の中には、トレンドの業種・投資テーマを追いかけるテーマ型ファンドもありますが、トレンドが変わった時にテーマの見直しを機動的に行なうアクティブファンドもあります。強い革新性を誇り常に新陳代謝を繰り返してきた米国株式へ投資を行なう場合には、将来のトレンドを発見することも大切です。テーマ入れ替え型のファンドなどの傾向を参考に、目的やご自身のリスク許容度によって検討してみてはいかがでしょうか。