【第2回】制度の理解・認知の状況と今後の利用意向

確定拠出年金に関する意識調査コラム2023

野村アセットマネジメント資産運用研究所では、2022年12月に「確定拠出年金に関する意識調査2023」を実施しました。本調査は20歳~69歳までの8,386人を対象に、確定拠出年金(企業型、個人型)の利用状況などについてご回答いただいています。そのアンケート結果より、第2回は確定拠出年金制度に関する理解・認知の状況と今後の利用意向についてご紹介します。

企業型確定拠出年金の認知度は約5割、個人型確定拠出年金は約7割

企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)に加え、資産形成制度として広まりつつある一般NISAおよびつみたてNISAの4つの制度について、どれだけ理解・認知されているかを見てみましょう。

「詳しく理解している」、「大まかに知っている」、「名前を聞いたことがある程度」と答えたケースを「認知している」と定義すると、企業型DCでは全年齢平均で約5割と最も少なく、iDeCoでは約7割、一般NISA、つみたてNISAでは約8割と相対的に多くの方が認知している事実が浮かんできました。企業型DCについては所属する企業が採用する制度であり、すべての方に関わるものではないためこのような結果になったものと思われます。

各制度の理解・認知度(全年齢平均)

各制度の理解・認知度(全年齢平均)の図

(注)グラフ内の数値は小数点以下四捨五入しているため、内訳の合計が100%にならないことがあります(以下、同)。

5年前と比べるとiDeCo、つみたてNISAで認知度が大きく上昇、つみたてNISAは若年層中心に

それでは、5年前の2018年、つみたてNISAがスタートした年に実施した意識調査※1の結果と比べてみましょう。

iDeCoについては47%⇒72%(+26%)、一般NISAは76%⇒80%(+4%)、つみたてNISAは69%⇒80%(+11%)といずれも認知度が上がっていることがわかります。

数値は小数点以下四捨五入しているため、2022年調査と2018年調査の差分が増減率と一致しないことがあります。

iDeCoについてはこの5年間で+26%と大きく認知度があがりました。これは2017年に実施された加入者の範囲拡大により利用者の増加傾向が顕著になったことや、その後の制度改正とも関連していることが考えられます。一般NISAについては2014年に制度がスタートして4年が経過していたため、2018年時点で既に76%の認知度がありました。そのため、その後の大きな変化は見られませんが、2018年に開始したつみたてNISAは一般NISAと同じ80%まで認知度が高まっています。

各制度における認知の割合(全年齢平均)

各制度における認知の割合(全年齢平均)の図

次に、年代別の変化の様子にも着目してみましょう。大きな違いがみられたのがiDeCoとつみたてNISAです。iDeCoではどの年代も認知度が満遍なく増えているのに対して、つみたてNISAでは若年層ほど認知度が高まっていることがわかります。近年、メディアで若年層のつみたてNISA口座開設が増えているという報道と合致する結果といえるでしょう。

各制度における認知の割合(過去調査との年代別比較)

iDeCo 2018年調査 2022年調査 増減率
TOTAL 47% 72% + 26%
20-29歳 41% 69% + 28%
30-39歳 51% 75% + 24%
40-49歳 51% 75% + 24%
50-59歳 50% 74% + 24%
60-69歳 40% 68% + 28%

一般NISA

TOTAL 76% 80% + 4%
20-29歳 60% 71% + 11%
30-39歳 72% 80% + 7%
40-49歳 75% 82% + 8%
50-59歳 80% 82% + 1%
60-69歳 86% 82% - 4%

つみたてNISA

TOTAL 69% 80% + 11%
20-29歳 56% 79% + 23%
30-39歳 67% 81% + 14%
40-49歳 68% 81% + 13%
50-59歳 72% 82% + 10%
60-69歳 78% 78% + 0%

(注)表の中の数値は小数点以下四捨五入しているため、2022年調査と2018年調査の差分が増減率と一致しないことがあります。

企業型DC、iDeCo加入者のうち約3割は「詳しく理解している」

制度の加入者および未加入者における理解・認知度の状況を見てみましょう。企業型DC、iDeCoそれぞれの加入者のうち「詳しく理解している」と回答した方が約3割います。将来の年金資産のための資産形成制度ですので、できるだけ詳しく理解している状態は望ましいと考えます。

一方、未加入者ですが、企業型DCの未加入者のなかには、所属する企業が制度を用意していないケースも想定されますので、この数字についての分析はここでは触れません。iDeCoについては、未加入者のうち25%が詳しく、あるいはおおまかに知っていると回答しています。

加入別の制度理解(全年齢平均)

加入別の制度理解(全年齢平均)の図

それでは、未加入者はどのような理由で制度を利用していないのでしょうか?企業型DC、iDeCoともに「制度のことがよくわからないから」が25%と最も高くなりました。次に「生活費等がかさみ、投資に回せるお金がないから」、「運用して損をしたくないから」が続きます。

第1回コラムで紹介したように、約8割の人が老後の生活資金に関して不安があり、5割弱の人が資産運用に関するアドバイスが欲しいと回答していました。次のグラフの「制度を利用していない理由」と合わせて推測すると、制度について説明してもらったり(①、⑥、⑧、⑩)、運用に関するアドバイスを受けることで(③、④、⑨)、まずは制度を利用するかどうかを判断する材料が得られるようになるでしょう。知らないから利用していないという人が少しでも減ることが望ましいと考えます。

制度を利用していない理由(全年齢平均)

制度を利用していない理由(全年齢平均)の図

iDeCo未加入者のうち、約4割は今後の利用意向あり

最後に、今後の利用意向について見てみましょう。

2~3年以内に利用したいと思うかどうかを聞いた結果が次のグラフです※2。現在、企業型DCに加入している人で「今後の利用意向がある」※3のは87%、iDeCoに加入している人は93%でした。すでに制度に加入している人は、継続的に制度を利用し、将来に向けた資産形成に取り組んでいきたいという意思を感じられます。

一方で、現在企業型DCの未加入者で「今後の利用意向がある」の割合は35%、iDeCoに加入していない人の中で「今後の利用意向がある」の割合は40%でした。企業型DCの未加入者で、勤務先が制度を導入していない場合は自らの意志ではどうにもなりませんが、iDeCo未加入者のうち、利用意向のある人がそれなりにいることがわかります。

加入別の利用意向(全年齢平均)

加入別の利用意向(全年齢平均)の図

次回は制度を利用する理由やきっかけ、ニーズについて紹介していきます。

※1 野村アセットマネジメントにて2018年6月に行った「人生100年時代の資産運用に関する調査」を指します。この調査は、20歳以上の約2万人を対象にしており、一般NISAとつみたてNISA、iDeCoについて「名前も内容も知っている」「概要は知っている(詳細は知らない)」「名前は聞いたことがあるが、よく知らない」「名前も聞いたことはない」の中からそれぞれ回答いただいています。「認知している」とは「名前も内容も知っている」「概要は知っている(詳細は知らない)」「名前は聞いたことがあるが、よく知らない」を選んだ方の割合を合計しています。また、調査対象には70代以上の方が含まれていましたが、2022年調査と整合性を合わせるため、70代以上の方の回答を除いて再集計しています

※2 すでに制度を利用している方には“継続して今後も利用したいか”、制度を利用してない方には、“今後利用したいか”を聞いています。なお、企業型DCについては、“勤務先等で導入していれば”という想定の下で、回答していただいています

※3 「今後の利用意向がある」とは「利用したい」と「できれば利用したい」と回答した方の割合を合計