【第3回】制度を利用する理由・きっかけ
確定拠出年金に関する意識調査コラム2023
野村アセットマネジメント資産運用研究所では、2022年12月に「確定拠出年金に関する意識調査2023」を実施しました。本調査は20歳~69歳までの8,386人を対象に、確定拠出年金(企業型、個人型)の利用状況などについてご回答いただいています。そのアンケート結果より、第3回は制度を利用する理由やきっかけ、ニーズについてご紹介します。
確定拠出年金の利用者が掲げる三大理由は、税制優遇・老後資金確保の手段・低コスト
企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)を利用している方にその理由を聞いた結果は次の通りです。
「勤務先等で導入しているから」が約6割と最も高くなりました。これは制度の性質上、制度を導入している企業の職員は基本的に利用することが前提となりますので当然の結果と思われます。以下、「税制優遇措置があり有利だから」、「老後資金の確保に必須の制度だと思うから」、「低コストで運用できるから」と続きます。優遇税制が投資行動に影響を及ぼす大きな要因になっていることが確認できます。
また、確定拠出年金の対象ファンドは販売手数料がかからないノーロードファンドであったり、信託報酬率がその他のファンドに比べて低いケースが多いことなどから、コストの低さを理由に挙げる方も一定数いるようです。年齢層が低いほどコストに敏感な方が多くなる傾向がみられるのも特徴的です。
次に、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)を利用している方にもその理由について聞きました。
制度の大きなメリットである「税制優遇措置があり有利だから」を理由に挙げる割合が6割と高くなりました。iDeCoは所得控除のメリットもあるため高めの数値になっていると推測されます。次いで「老後資金の確保に必須の制度だと思うから」、「低コストで運用できるから」が続いています。この上位3つについては、企業型DCの利用者が2位以降に掲げた順番と同じになりました。税制優遇・老後資金確保の手段・低コストが、確定拠出年金制度の利用者にとっての三大理由といってよいでしょう。
世代別に比較してみると、こちらも企業型DCと同様、「低コストで運用できるから」が、若年層ほど比率が高くなっています。「安心して運用できる商品がそろっているから」についても同様の傾向が見られます。企業型DCはその制度を採用している企業の職員でなければ加入できないのに対して、iDeCoの場合、基本的に自らの意思によって加入するかどうかを決定する仕組みのため、iDeCoをすでに利用している若年層は、コストや商品選定についても意識の高い方が多いのかもしれません。
iDeCo加入時のポイントは、使い慣れた金融機関であること、ラインアップが揃っていること、管理コストが低いこと
iDeCoに加入している方に「加入時に重視した項目」について聞きました。(企業型DCは所属する企業がその制度を採用しているかどうかによって自動的に決まってしまうので、ここではiDeCo加入者のみを対象としました)
「普段利用している金融機関であること」が34%、「商品のラインアップ(自分が購入したい商品があること)」が31%、「口座管理コストが安いこと」が30%と上位3位がほぼ拮抗しました。iDeCoは利用者が金融機関を決める必要があり、この点は加入者が商品を選定するところからはじめる企業型DCとの大きな違いです。iDeCoの加入にあたっては、使い慣れた金融機関であること、ラインアップが揃っていること、管理コストが低いこと、という順番でアプローチする方が多いようです。
未加入者が今後、利用し始めるきっかけとして求めることは「サポート、教えてくれる人がいれば」
企業型DC、iDeCoを利用していない方が実際に制度を利用し始めるにはどのようなきっかけがあればよいか聞いた結果は次の通りです。
「始めるにあたってサポート、教えてくれる人がいれば」との回答が企業型DCでは15%、iDeCoでは17%と最も高くなりました。続く「リスクとリターンのイメージがつけば」、「税制メリットに魅力を感じれば」を含め、制度を利用し始めるには誰かのサポートが重要なポイントになっているようです。
また、老後資金や資産形成に関してあったらよいと思う制度・サービスについて聞いたところ「運用の相談に乗ってくれる」との回答が23%と最も高くなりました。加えて、「勤め先企業が手続きから管理まで対応してくれる」も21%となっていることから、制度を利用し始める時に限らず、利用を開始した後も必要に応じて運用のサポートをしてほしいニーズがあることが伺えます。
税制優遇のメリットを活用することは資産形成を行う上では重要なポイントです。さらに、制度の活用には専門家のサポートが求められていると考えられることから、今後、信頼できる専門家を身近な存在として活用できる仕組みがどのように整えられていくのか?さらなる普及において重要なポイントになると思われます。
次回は毎月の投資金額と商品の配分指定について紹介していきます。