新興国株式とは?「新興国」ってどの国?

投資先の選び方

投資信託で資産運用を始める時、どの投資対象を選択するか迷う方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、新興国株式について解説します。

新興国株式とは?

新興国とは、一般的に、現時点では先進国と比較して経済水準が低いものの、高い成長期待のある国を指します。新興国株式とは、新興国の企業が発行する株式のことです。新興国株式で構成される代表的な指数として「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」などがあります。

では、具体的に新興国とはどの国を指すのでしょうか。一例として、「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」を算出している米国の金融サービス企業「MSCI Inc.(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社)」が発表している市場分類を見ていきましょう。
MSCI Inc.では、以下の通り、先進国市場、新興国市場、フロンティア市場に分類されています。また、金融市場がない、または金融市場はあるが紛争などで投資先として不適格とされる国は「スタンドアローン市場」に分類されます。この分類は、毎年6月に各国の経済規模や金融市場の流動性などを基に更新されます。

MSCIによる各市場の構成国

MSCIによる各市場の構成国の図

2023年6月末時点。

(出所)MSCIの情報を基に野村アセットマネジメント作成

新興国よりも発展途上段階にある国の市場を指します。※1 投資する際には、金融市場の流動性の低さや政治的な不安定要因などのリスクを考慮する必要があります。

※1(出所)MSCI

「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」とは?

「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」とは、上述の「新興国市場」に分類された国24カ国の時価総額の約85%を占める、約1,380銘柄を投資対象としています。国別内訳は以下の通りで、中国やインドなどアジアの比率が高いことが分かります。

MSCIエマージング・マーケット・インデックス 国別内訳

MSCIエマージング・マーケット・インデックス 国別内訳の図

2024年3月末時点。

(出所)MSCIの情報を基に野村アセットマネジメント作成

世界経済の規模を図る指標にGDP(国内総生産)があります。以下の通り、2000年時点では上位5位までを先進国が占めていましたが、徐々に中国・インドがシェアを伸ばし、2028年には2位が中国、3位がインドになる見通しです。

世界のGDP※2シェア

世界のGDPシェアの図

※2名目GDP。

2024年以降はIMF予測。

上記は、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

(出所)IMF「World Economic Outlook Database, October 2023」のデータを基に野村アセットマネジメント作成

MSCIエマージング・マーケット・インデックスに連動を目指すインデックスファンドであれば、今後の経済成長が見込まれる中国とインドを中心とした新興国の株式に広く投資することができます。

新興国株式の特徴

新興国株式は、経済的な成長期待の高さが魅力です。
成長が期待できる理由の1つが、生産年齢人口の増加です。以下のグラフの通り、新興国では15歳以上65歳未満の生産年齢人口、いわゆる働き手が増加する見込みです。これにより、先進国と比較して経済活動の活発化が期待できます。

新興国と先進国の生産年齢人口推移(国連推計)

新興国と先進国の生産年齢人口推移(国連推計)の図

期間:1950年~2100年、5年ごと

生産年齢人口:15~64歳の人口

(出所)国連「World Population Prospects 2022」を基に野村アセットマネジメント作成

GDP成長率を比較すると、以下の通り、新興・開発途上国のGDP成長率は先進国と比較して高い見通しとなっています。

GDP※3成長率見通し(前年比、%)

2023 2024 2025
世界 3.1 3.1 3.2
先進国 1.6 1.5 1.8
米国 2.5 2.1 1.7
ユーロ圏 0.5 0.9 1.7
日本 1.9 0.9 0.8
新興・開発途上国 4.1 4.1 4.2
中国 5.2 4.6 4.1
インド 6.7 6.5 6.5
ブラジル 3.1 1.7 1.9

※3実質GDP。

2024年以降は予測値。

(出所)IMF「World Economic Outlook Update, January 2024」を基に野村アセットマネジメント作成

一方で、先進国と比べると政治や経済が不安定で、社会情勢などによって株価や為替の変動リスクが大きくなります
以下は主要な株価指数をベンチマークとするインデックスファンドを1年間保有した場合の年間リターン(円換算ベース)の振れ幅を示しています。資産運用において「リスク」とは、「リターンの振れ幅」のことを指しますが、他の市場と比較して、新興国株式はリスクが大きいことが分かります。

1年間保有した場合の年間リターン(円換算ベース)の振れ幅

1年間保有した場合の年間リターン(円換算ベース)の振れ幅の図

税金・手数料などは考慮しておりません。グラフは過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

(使用した指数)世界株式:MSCI –KOKUSAI指数(配当込み・円ベース)、米国株式:S&P500種株価指数(配当込み・円換算ベース)、日本株式:TOPIX(配当込み)、新興国株式:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(配当込み・円換算ベース)

(期間)1989年1月末~2024年3月末、月次

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

新興国株式に投資する有効な方法とは?

新興国株式はリスクも大きく、個人で分析・投資する難易度の高い市場ですが、投資信託を活用すれば、資産運用のプロであるファンドマネージャーに投資判断を任せることができます。

投資信託は、複数の投資家から資金を集めて、運用の専門家が債券や株式などに投資・運用する金融商品です。ファンドマネージャーは、それぞれ担当の投資信託があり、運用方針に基づいて投資判断を行ないます。投資信託は1人で運用するのではなく、チームで運用することが一般的です。ファンドマネージャーは、担当する投資信託について投資計画の策定や投資先の最終判断を行ないます。

たとえば、新興国の中でも今後のGDP成長率が高いと予想されているインド株式はインド政府が外国人投資家に対して投資規制を行なっているため、特定の条件を満たさなければ、個人で投資することができません。しかし投資信託を活用すれば、個人では投資できないインド株式のような資産にもアクセスすることが可能です。中には、ファンドマネージャーが現地企業を訪問して経営の健全性や経営者の人柄を確かめるなど、個人では難しい投資判断を行なう投資信託も存在します。

投資信託を活用して新興国株式を保有することで、ハイリスク・ハイリターンの運用を目指すことができます。先進国株式に新興国株式をプラスするなど、ご自身のリスク許容度に合わせた活用を考えてみてはいかがでしょうか。
また、新興国株式は値動きが大きく、投資を開始するタイミングに迷う方には、積立投資も効果的です。