妊娠~出産期
徹底分析!子育てのお金
~子供の世代別 意外にかかること、案外かからないこと~
このコラムでは、妊娠~出産期に必要なお金や活用できる助成制度などについて説明します。想定以上にお金が必要なことや、案外かからないことに気づくかもしれません。
妊娠~出産期にかかる費用は、主に妊婦健康診査(以下、妊婦健診)と出産にかかる費用です。
妊婦健診とは?
妊婦健診は妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を定期的に確認するために、病院・診療所・助産所などで妊娠週数に応じた問診・診察、保健指導などを行ないます。受診する病院によっても検査項目や分娩費用が異なるため、病院選びも大事なポイントになってきます。病院によっては定員が決まっている場合もあるため、希望の病院がある場合は、妊娠がわかった段階で早めに受診した方が良いかもしれません。厚生労働省は望ましい健診回数や受診間隔を以下の通りとしています。
標準的な妊婦健診の例
時期 | 妊娠初期~23週 | 妊娠24週~35週 | 妊娠36週~出産まで |
---|---|---|---|
健診回数 (1回目が8週の場合) |
4回 | 6回 | 4回 |
受診間隔 | 4週間に1回 | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
(出所)厚生労働省「すこやかな妊娠と出産のために」(https://www.mhlw.go.jp/)を基に野村アセットマネジメント作成
妊婦健診にかかる費用は?
妊婦健診は健康保険の対象外ですが、すべての自治体が公費で助成を行なっています。居住している自治体に妊娠の届出を行なえば、母子手帳と一緒に14枚前後の「妊婦健康診査受診票」という受診券(補助券)をもらうことができます※1、2。自治体からの助成はありますが、一般的に自分で負担する額は1~10万円※3程度と言われています。
※1自治体によって妊婦健康診査受診票が発行されるタイミングや枚数、助成額は異なります。
※2(出所)厚生労働省「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について(平成30年4月1日現在)」(https://www.mhlw.go.jp/)
※3(出所)金融広報中央委員会「くらし塾 きんゆう塾」Vol.58 2021年秋号(2021年(令和3年)10月発刊)を基に野村アセットマネジメント作成
出産にかかる費用は?
正常分娩で室料差額などを含まない出産費用の平均額は約46万円です。出産時には、国民健康保険などの公的医療保険から子供1人につき42万円(2023年4月以降の出産は50万円)の「出産育児一時金」※4が支給されます。出産育児一時金を出産費用に充てるとすれば、自分で負担する額は約4万円前後という計算になります。
※4(出所)厚生労働省「第161回社会保障審議会医療保険部会資料(全体版)」(https://www.mhlw.go.jp/)
出産費用(正常分娩)の平均額
平均値 | |
---|---|
全体 | 460,217円 |
公的病院 | 443,776円 |
私的病院 | 481,766円 |
診療所(助産所を含む) | 457,349円 |
・正常分娩に係る直接支払制度専用請求書を集計したものであり、室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を除く出産費用の合計額
公的病院:国公立病院、国公立大学病院、国立病院機構等
私的病院:私立大学病院、医療法人病院、個人病院等
診療所:官公立診療所、医療法人診療所、個人診療所、助産所等
・厚生労働省保険局において集計
(出所)厚生労働省「第136回社会保障審議会医療保険部会資料(全体版)」(https://www.mhlw.go.jp/)を基に野村アセットマネジメント作成
妊娠~出産期に活用できる助成制度
国や自治体が設ける助成制度を活用して、妊娠~出産期にかかる負担を軽減しましょう。今回取り上げる助成制度は一例で、情勢ごとに政府が子育て支援について新たな発表を行なうこともあります。受けられる助成制度は各自の状況によっても異なりますので、病院や母親学級などでも情報を集めてみましょう。
妊娠~出産期に活用できる助成制度
種類 | 対象条件 | 支給/免除額(目安) |
---|---|---|
会社員・専業主婦・自営業者が活用できる制度 | ||
妊婦健診の助成 | 市区町村に住民票があること | 14枚前後の「妊婦健康診査受診票」という受診券(補助券)の発行※5 |
出産育児一時金 | 健康保険や国民健康保険などの被保険者及びその被扶養者 | 原則42万円(2023年4月以降の出産は50万円)/子供1人を支給 |
高額療養費 | 1ヵ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合 | 自己負担限度額を超えた額を支給 自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。世帯当たりの年収が約370万円~約770万円の場合、ひと月の上限額は80,100円+(医療費-267,000)×1%となります。 |
医療費控除 | その年の1月1日から12月31日までの間に、納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために一定額を超える医療費を支払った場合 | 納税した所得税に対して、医療費の額を基に計算される金額(下記参照)を確定申告すると税金の一部が還付 医療費控除の金額は、実際に支払った医療費の合計額-①-② ①保険金などで補てんされる金額(生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など) ②10万円(その年の総所得金額などが200万円未満の人は、総所得金額などの5%の金額) |
国民年金保険料の免除 | 国民年金第1号被保険者 | 出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヵ月間の国民年金保険料が免除 |
会社員が活用できる制度 | ||
出産手当金 | 出産する本人が勤務先の健康保険に加入しており、産前産後休業を取得した場合 | 出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、会社を休み給与の支払いがなかった期間中、1日につき支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)を支給 |
育児休業給付金 | 育休を取得する本人が勤務先の雇用保険に加入しており、一定の要件を満たした場合 | 育児休業開始から180日目(6ヵ月目)まで:月収の67%を支給 育児休業開始から181日目以降:月収の50%を支給 ただし、支給には上限額があります。 |
健康保険・厚生年金保険料の免除 | 健康保険・厚生年金保険の被保険者が産前産後休業を取得した場合 | 産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)・産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)、被保険者・事業主の両方の健康保険・厚生年金保険の保険料が免除 |
上記は一例であり、全てを網羅したものではありません。
※5自治体によって妊婦健康診査受診票が発行されるタイミングや枚数、助成額は異なります。
(出所)厚生労働省「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について(平成30年4月1日現在)」「第161回社会保障審議会医療保険部会資料(全体版)」「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」「育児休業給付の内容と支給申請手続 2022(令和4)年10月1日施行版」(https://www.mhlw.go.jp/)、国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(https://www.nta.go.jp/)、日本年金機構「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」(https://www.nenkin.go.jp/index.html)、全国健康保険協会「出産手当金について」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/)を基に野村アセットマネジメント作成
上記のように、妊娠~出産期にかかる費用には助成制度がありますが、出産する医療機関に支払うなど先に立て替えなければならない場合もあり、まとまったお金が必要になる時期です。
しかし、「直接支払制度」を利用して直接的な負担を減らす方法もあります。「直接支払制度」とは、医療機関などが皆さんに代わって出産後に支給される「出産育児一時金」などの支給申請と受け取りを直接保険者と行なうというものです※6、7。この制度を活用することで、たとえば2023年3月以前で出産費用に46万円かかった場合、「出産育児一時金」で支給される42万円が出産費用から差し引かれ、退院の時などに精算する際は、差額分の4万円を支払う形となります。出産費用全額を事前に用意しなくてもよくなるため、活用してみるのも選択肢の1つです。
※6直接支払制度を取り扱っている医療機関に限ります。
※7(出所)厚生労働省「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」実施要綱(https://www.mhlw.go.jp/)
【インタビュー】妊娠~出産期に意外にかかったこと・案外かからなかったこと
実際に子育てをしている野村アセットマネジメントの社員に、妊娠~出産期に意外にかかったこと・案外かからなかったことをインタビューしました。
意外にかかったこと
案外かからなかったこと
中には想定していたより何十万円もかかってしまった人もいるなど、自己負担額には個人差があるようです。妊娠や出産のタイミングで、お金について見直してみるのも良いでしょう。
また、いざ子育てが始まると、ゆっくり考える時間が取れなくなってしまいます。出産までの「とつきとうか」の間に、出産期以降のお金についても考えてみませんか。