アメリカ編

歴史から学ぶ資産運用

おじいちゃんにインタビュー!1970年以降のアメリカってどんな時代?

日々、様々なニュースが市場環境に影響を与えています。過去の出来事が市場にどのような影響を与えてきたのか、歴史を知ることで、資産運用のヒントになるかもしれません。
日本人とアメリカ人の両親から生まれた「私」は、日本とアメリカに住む祖父がいます。日本人の祖父には日本の歴史、アメリカ人の祖父にはアメリカの歴史、それぞれに話を聞いてみることにしました。
今回はアメリカ人の祖父からアメリカの歴史について聞いていきます。

登場人物

  • 私:18歳(2005年生まれ)

    私:18歳(2005年生まれ)

  • アメリカ人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

    アメリカ人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

アメリカの1970年以降の出来事について教えて

ニューヨークダウ平均株価の推移

期間:1969年12月末~2023年12月末、月次

ニューヨークダウ平均株価の推移の図

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

おじいちゃん、久しぶりだね。私、18歳になって成人したの。これからは一人前の大人として日本だけでなく世界のことを知りたいから、アメリカの歴史についてもいろいろ学びたいんだ。
成人おめでとう。日本では成人年齢が18歳になったんだよね。アメリカも州によって違いはあるけど、多くの州は18歳が成人年齢だよ。
アメリカは州によって法律が違うんだよね。日本のおじいちゃんに日本経済の歴史について教えてもらったんだけど、まだまだ知らないことばかりで…。だからアメリカの歴史についても教えて欲しいな。
おじいちゃんが大人になってからの1970年代のアメリカといえば、ニクソン・ショック(米ドル・金交換の一時停止)があったね。戦後の勢いから反転して、景気低迷にも関わらずインフレに悩む時代だったよ。
為替が変動相場制に移行したきっかけになった出来事だよね。ニクソン・ショックって具体的にはどんな出来事だったの?

変動相場制による日本への影響はコラム「1970年代ってどんな時代?(日本編)」をご覧ください。

少しさかのぼっておじいちゃんが生まれた頃の第二次世界大戦後、1950年代・60年代のアメリカは力をつけて、世界の中心になり黄金の時代を迎えていたんだ。そして、ニクソン・ショック以前は、為替相場を安定させる目的で各国通貨と米ドルの交換比率を固定して、米ドルと金との交換を1オンス35米ドルで保証するという、米ドルを間に挟んだ金本位制(ブレトン・ウッズ体制)だったんだ。アメリカはベトナム戦争への介入などによって大幅な財政赤字を抱えていて、米ドルが大量に国外に流出してしまったんだ。その結果、アメリカは金と米ドルの交換に応じるのが難しい状況になってしまった。そこで1971年にニクソン大統領は金と米ドルの交換停止を発表したんだけど、突然の発表で世界経済に大きなショックを与えたんだ。そして為替相場は新たな展開を迎えることになったんだよ。
その後、為替は固定相場制から変動相場制に移行していったんだね。1970年代のアメリカは景気があまり良くなかったの?
そうだね。景気低迷とインフレが同時に起こるスタグフレーションという状態になったんだ。
景気が低迷しているのに物価も上がるなんて、市民の生活にとってはダブルで厳しい状況だったんだね。そういえば、1970年代のオイルショックの影響で日本はインフレになった話を聞いたけど、アメリカはどうだったの?

アメリカの消費者物価指数(CPI)の推移(前年同月比)

期間:1970年1月~2023年12月、月次

アメリカの消費者物価指数(CPI)の推移(前年同月比)の図

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

ニクソン・ショックの影響で米ドル安が進み輸入品の価格が上がったことに加えて、1970年代の2度のオイルショックの影響でアメリカもインフレが深刻になっていった。上のグラフのように前年と比べて10%以上の物価上昇が続く期間もあったんだ。それに、国際競争が激化して、日本は急成長、ヨーロッパも戦後の復興で勢いが出てきたことで、アメリカの製造業は外国の勢いに押される展開になったんだ。インフレや貿易赤字の影響などもあって1970年代のアメリカの株式相場は長く低迷して、「株式の死」とまでいわれてたんだよ。
1970年代はアメリカの経済にとって厳しい時代だったんだね。
そうだね。おじいちゃんは20代だったけど、子供の頃の勢いに比べて厳しい環境がしばらく続いたって印象だね。その後、1981年にレーガン大統領が就任し、「双子の赤字」といわれた財政赤字と貿易赤字や、スタグフレーションの問題に対応するため、レーガノミクスと呼ばれる経済政策が打たれたんだ。主な政策としては、個人や企業に対して減税や規制緩和を行ない、国民の労働・消費・貯蓄活動に繋げること、企業の生産性向上や自由な経済活動を可能にして業績改善を目指すこと、ほかにも国の出費を最小限に抑えて赤字を減らすこと、そして深刻なインフレを抑えるために、通貨の供給量を抑えたり、政策金利を上げたりする金融政策を打ったことなどだね。
日本でも安倍政権時にアベノミクスってあったよね。レーガノミクスの効果はどうだったの?
レーガノミクスによってインフレは抑制されて、景気も少しずつだけど良くなっていった気がする。でも依然「双子の赤字」の解消にはなかなか繋がらなかった。インフレを抑制するために政策金利も年率20%台※1をつけるほど高かったから米ドル高が進み、1985年の「プラザ合意」に至ったんだ。

※1金利はFF金利誘導目標。(出所)ブルームバーグ

プラザ合意の話は日本にも大きな影響があったって教えてもらったよ。アメリカにとってはどうだったの?
為替がプラザ合意直前の1985年8月末の1米ドル約237円から1987年12月末には約122円と2年強で半分程度の水準まで米ドル安になったことやインフレが落ち着いたことで、景気が回復していきアメリカの株式相場もどんどん上がっていったね。ニューヨークダウ平均株価は1989年末には2,753米ドルと1970年代の相場から大きく上昇したんだ。でも、当時の世界の時価総額ランキングTOP10にはアメリカは3社しか入っておらず、バブル全盛期だった日本がほとんどを占めていたね。

1989年の世界の時価総額ランキングについてはコラム「1980年代ってどんな時代?(日本編)」でも話しています。

おじいちゃんは株式などへの投資はしていたの?
30歳で結婚して、老後資金のために401k制度を使ってアメリカ株式に投資する投資信託を中心に資産運用していたね。
401kって何?
アメリカの私的年金制度の一つだよ。日本にも「企業型DC」ってあるだろう?それはアメリカの401kを参考にして始まった制度だよね。401kを導入している企業は、月々の給料の一部をそのまま受け取るか、受け取らずに401k制度を使って投資信託などの資産の積立に回すか、どちらかを選ぶことができるんだ。
お給料の一部を投資に回していたってこと?
そうだね。僕は金融機関のアドバイザーにも相談して、投資信託で毎月積立投資をしていくことが効果的だと教えてもらって始めたんだ。インフレ対策にも株式は効果的だって聞いたから、アメリカの株式を投資対象にした投資信託を選んだんだ。
インフレに株式投資が効果的なの?日本のおじいちゃんが日本はデフレが続いていたけど、最近はインフレになってきているから不安だって言ってたの。アメリカはもっとインフレが深刻だと思うんだけど、何か対策をしていたら教えて。
一般的に株式はインフレに強い資産の一つだっていわれているよ。株価は企業の業績に連動する傾向があって、インフレでモノ・サービスの価格が上がると企業の売り上げが上がって収益の上昇が期待できるからね。適度なインフレは好景気には必要な要素だけど、日本はデフレの時代が長く続いてきたから、インフレに対する恐怖を強く感じてしまうのかもしれないね。
日本のおじいちゃんも株式投資をしていたけど、バブルが崩壊した時に怖くなってやめてしまったんだって。価格の動きが大きくてギャンブルのように感じてしまったって言ってた。
僕は投資信託を使って株式に投資をしていたけど、将来20年・30年後に使うお金を少しずつ積み立てていて、長期的な資産成長を目的としていたから、短期的な値動きに左右される投資の仕方ではなかったんだよね。それでも、大きく価格が下がる時は不安だったから、アドバイザーに相談して感情的に売ってしまわないようにフォローしてもらっていたよ。特に1987年に起こったブラックマンデーの時はまだ投資経験も浅かったから本当に不安だったね。ニューヨークダウ平均株価が2,246米ドルから1,738米ドルに1日で508米ドルも下がったんだよ。1日で22.6%下落したんだから相当大きなインパクトだよね
そんなに大きな下落があってもずっと投資を続けられたのはどうしてなの?
積立投資の特徴としては、毎月同じ金額で、同じ商品を買い続けるから、価格が下がった時はたくさんの数量を買うことができるチャンスと捉えることもできるんだ。アドバイザーにどうしてこんな状況になったか教えてもらい、長期目線の見通しが崩れてしまうわけではないことが分かって安心できたっていうのもあるね。投資額も生活に支障が出ない範囲にしていたし、投資しているお金をその時すぐに使う必要があったわけでもないしね。
すぐに必要なお金を投資に回していた人は大変だっただろうね。
そうだね。株式は上がったり、下がったりするけど常に相場をチェックするのは大変だし、働きながら投資による心理的な負担を抱えるのはしんどいしね。ブラックマンデー以降、2000年のITバブルの崩壊、2001年の米国同時多発テロ、2008年の金融危機(リーマン・ショック)など株価が急落することが何度かあったけど、アメリカの経済成長は長期的に続くという投資を始めた時の考えが自分の中で崩れなかったから、積立投資を続けていったよ。
それでも、私でも知っているリーマン・ショックは大きなダメージだったんじゃないの?そもそもリーマン・ショックはどうして起こったの?
2000年代に入ってITバブル崩壊後、アメリカは金融緩和政策を行なっていたんだ。その後比較的景気が上向きになった後も、金利は低位で安定していた。その頃、新興国の経済発展などによって中東のオイルマネーや中国からのお金などがアメリカにどんどん入ってくることによって、不動産などの投資にお金が回っていったんだよね。住宅市場が活況になったことで、不動産価格が好調ならと低所得者の中にも住宅購入を考える人が増えて、サブプライムローンと呼ばれる信用力の低い借り手向けの住宅ローンの利用者が増えていったんだ。でもその後、政策転換で政策金利が年率1%から5.25%※2まで段階的に引き上げられたら、住宅ブームが落ち着いて、住宅価格が下がり始めてしまった。サブプライムローンは住宅を担保にして返済できなかったら住宅を売却して返すという仕組みだったんだけど、不動産価格が下がってしまったことで返済できなくなる人が急増して、金融機関の収益状態が悪化していってしまったんだ。

※22003年6月末~2007年8月末。金利はFF金利誘導目標。(出所)ブルームバーグ

日本も金利が上がったことでバブルが崩壊したって聞いたけど、アメリカも同じような状況だったんだね。サブプライムローンの影響を大きく受けたのがリーマン・ブラザーズだったってこと?
そうだね。リーマン・ブラザーズはサブプライムローン関連で多額の損失を負うことになって負債総額6,000億米ドル超ともいわれる史上最大級の規模で倒産することになった。このリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとしてサブプライムローン問題からリーマン・ブラザーズの破綻という歴史的な金融危機へと発展していくことになったんだ。
日本はバブル崩壊後、失われた30年という景気低迷期を迎えるけど、アメリカはどうなったの?
この時の金融危機に対するアメリカの財政出動は迅速だったな。その後、金融機関にも今後簡単に破綻しないよう自己資本の比率を上げるように規制を強化したんだ。いろいろな金融緩和政策などで乗り切りながら、その後は景気低迷~回復を繰り返しながら株価は成長していった。バブル崩壊や金融危機を経験しながらも、ニューヨークダウ平均株価は1969年12月末で800米ドルだったのが2000年12月末には10,786米ドル、そして2023年12月末は37,689米ドルと上昇してきたんだ。およそ50年で約45倍になるまで上昇しているんだよ。
45倍!?日本では日経平均株価が1969年12月末から2023年12月末で14倍くらいになっているけど、アメリカは45倍になっているなんて!
驚くかもしれないけど、僕は長い目線で世界経済はこれからも拡大していくと思ったし、アメリカはその中心となって経済を牽引していくと信じていたよ。ITバブルは一度は崩壊してしまったけど、その後もIT技術は進化し、アメリカでは革新的な製品やサービスが次々と生まれて、ハイテク株を中心に株価がどんどん上がっていってるよね。
ハイテク株って何?
ITや通信関連企業などの最先端の高度な技術をもつ企業の株式のことだよ。有名な企業だとアップルやマイクロソフト、グーグルなどは知ってるんじゃない?

記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。

もちろん私も知ってる!今の世界の時価総額ランキングでも上位なんだよね。
そうだね。経済の成長において人口増加と生産性向上はキーワードといわれているけど、これらの企業は生産性向上のためのイノベーションを起こしてきた企業だよね。アメリカ企業のイノベーションの力は国民性もあると思うな。資本主義のアメリカは誰もが成功できるチャンスを持ち、それを応援する投資家など資本システムが整っているんだ。だから「アメリカンドリーム」を求めて挑戦する人が多いんだと思う。そんなチャレンジが続いて、シリコンバレーが誕生し、世界のハイテク企業が集まる拠点となったんだよね。アメリカのGDPは世界1位で、さらに、世界経済が拡大する中で、アメリカ経済も拡大を続けているから、アメリカの経済規模のシェアは変わらず4分の1程度を占めているんだ。

世界の経済規模の推移

世界の経済規模の推移の図

経済規模は名目GDP、2028年はIMF予想。新興国の定義はIMFによる。将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

(出所)IMF「World Economic Outlook Database, October 2023」を基に野村アセットマネジメント作成

世界の経済規模は今後も拡大する予想なんだね。アメリカはシェアを維持しているけど、日本は縮小気味だね。
僕は、アメリカはこれからも世界経済の拡大を牽引する技術革新を遂げていくと信じているし、アメリカ国民としてその成長を応援したい気持ちもあるね。
おじいちゃんは自国の成長を応援する意味でもアメリカの株式に投資しているんだね。結果としておじいちゃんの投資の成果ってどうなったの?
株価が45倍になったからコツコツ積み立てた資産は退職する頃には大きく成長していたよ。おかげで物価上昇にも負けない資産を形成することができたんだ。それに孫に会いに日本へ来たり、おばあちゃんと一緒に毎年旅行できたりするくらいの老後資産を形成することができたよ。
日本のおじいちゃんは、株式はギャンブルみたいという印象を持っていたけど、長い目線で見ると、インフレ対策や資産を成長させる効果もあるんだね。
そうだね。特に現役時代にしていた積立投資という方法のおかげで、相場の下落時にも衝動的にならずにすんだし、下落時は量をたくさん買えるタイミングと捉えることもできたね。若い頃にお金があったとして、まとまった金額で一気に買っていれば、45倍に成長させることができたかもしれないけど、少し上がった時に売ってしまったかもしれないし、下落時にも損が怖くて売ってしまったかもしれないな。だから給与から積み立ててくれる401kは僕には合っていた気がするよ。
私も就職したら企業型DCで資産形成してみたいな。

企業型DCは企業によって導入していない場合もあります。

企業型DCはメリットがあるけど、これから君は大学生になって社会人として働き始めるまで時間がある。日本では成人になったら自分で投資を始めることはできるんだよね?早くから始めることでより長く投資できてリスクも抑えられるし、お小遣いや貯金などから少額ずつでも、いまから始めてもいいんじゃないかな。
そうだね。2人のおじいちゃんのおかげでいろいろ知って興味がわいたし、経済を勉強するつもりで少しずつ資産運用を始めてみようと思う。

まとめ
ニューヨークダウ平均株価

1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 現在
ニューヨークダウ
平均株価
838.92米ドル
(1970年12月末)
963.99米ドル
(1980年12月末)
2,633.66米ドル
(1990年12月末)
10,786.85米ドル
(2000年12月末)
37,689.54米ドル
(2023年12月末)

(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成