【番外編】過去の株式市場の暴落局面から学ぶ
歴史から学ぶ資産運用
日々、様々なニュースが市場環境に影響を与えています。過去の出来事が市場にどのような影響を与えてきたのか、歴史を知ることで、資産運用のヒントになるかもしれません。
日本人とアメリカ人の両親から生まれた「私」は、日本とアメリカに住む祖父がいます。
今回はアメリカ人の祖父から、資産運用している中で起こった「株式市場の暴落要因とそれまでに至る背景」について詳しく聞いていきます。
登場人物
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私:18歳(2005年生まれ)
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アメリカ人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)
アメリカで起こった株式市場の暴落について教えて
(使用した指数)ニューヨークダウ平均株価(配当なし、米ドルベース)
(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
ブラックマンデーとは1987年10月19日に起きた株価暴落のことを指します。この日、ニューヨークダウ平均株価が1日で22.6%(508米ドル)暴落しました。1985年のプラザ合意以降に進行した米ドル安継続への不安や、インフレに対する警戒感など複数の要因が重なり、さらにプログラム取引が普及していたことで売りの連鎖を呼ぶ展開となりました。株価の下落は世界的に広がりましたがFRBが市場に資金を供給することを発表したり、機動的な利下げを行なったりするなど迅速な対処によって市場は回復しました。ニューヨークダウ平均株価も1年強で下落前の水準を取り戻しました。
この暴落をきっかけに米国では、一定以上の変動があった場合に取引を強制的に止めて投資家の冷静な判断能力を取り戻す時間を与えることを目的とした「サーキットブレーカー制度」が導入されました。
ITバブルとは1999~2000年頃にかけて米国市場を中心にインターネット関連企業の株価が急騰したことを指します。英語では「ドットコム・バブル」とも呼ばれています。
背景としては1990年代後半頃からインターネットの革新的な技術やサービスを提供するインターネット関連企業に注目が集まり、IT関連銘柄への投資が盛んになりました。加えて1998~1999年にかけての低金利政策によって、創業資金や株式への投資資金の調達が容易になり、株式市場にお金が流れ、将来性への過度な期待感から株価が急騰しました。IT関連銘柄が多いNASDAQ市場ではNASDAQ総合指数が1996年初の1,000ポイント前後から1998年末には2,000ポイントを超え、2000年3月10日には当時の高値である5,048ポイントにまで高騰しました。しかし、利益の裏付けのない企業や不正会計が発覚する企業などが出てきたことや、米国の利上げなどをきっかけに株価は急速に下落し、IT関連ベンチャー企業の多くが倒産しました。その中で生き残った一部の企業は、現在も活躍する企業へと成長していきました。
(使用した指数)NASDAQ総合(配当なし、米ドルベース)
(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
リーマン・ショックとは、2008年のサブプライムローン問題などをきっかけに米国大手金融機関であるリーマン・ブラザーズが破綻し、連鎖的に発生した世界的な金融危機を指します。
ITバブル崩壊後、米国では金融緩和政策が続いていました。また、同時期に新興国の発展などにより、中国や中東のお金が米国に流れ、不動産価格が上昇しました。住宅市場が活況になったことで、信用力の低い借り手向けの住宅ローン(サブプライムローン)の利用者が増加していきましたが、政策転換により米国の政策金利が引き上げられ、住宅ブームが落ち着くと住宅価格は下がりました。ローン返済ができない人が急増することで不良債権問題が生じた上に、サブプライムローンの証券化により債権者が世界中に拡大していました。そしてリーマン・ブラザーズが2008年9月に6,000億米ドル以上の負債を抱えて破綻したことをきっかけに世界的な金融危機へと発展しました。その後、米国を含む6ヵ国の中央銀行が翌月10月に政策金利の引き下げを同時に行なうなど異例の対応がとられました。
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日本におけるリーマン・ショック時の為替相場変動の一例
株価や不動産価格の下落率はとても大きかったですが、為替も大きく円高に進行しました。
たとえば、当時資源国かつ高金利通貨といわれていたオーストラリアドルについては2008年7月末時点で1豪ドル=約102円から2009年1月末時点で1豪ドル=約57円まで円高に進行しました。
同期間に豪州債券※1へ投資を行なった場合、豪州債券自体が値上がりしたにも関わらず、為替の下落によって、円換算で100万円投資していた資産が半年で65万円程度に目減りしたことになり、投資家の心理的には一時的に負担の大きい為替相場の変動となりました。
※1FTSEオーストラリア国債インデックス(豪ドルベース)
(出所)ブルームバーグ
(使用した指数)米国株式:ニューヨークダウ平均株価(配当なし、米ドルベース)
(期間)米国株式:1987年9月末~2024年7月末、月次。GDP:名目GDP、1987年~2029年、年次、2024年以降はIMF予測。
(出所)IMF「World Economic Outlook Database, April 2024」、ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
米国株式(S&P500種株価指数)リターンランキング
2004年7月末~2024年7月末、日次
下落率(上位5日)
1 | 2020/03/16 | -12.0% |
---|---|---|
2 | 2020/03/12 | -9.5% |
3 | 2008/10/15 | -9.0% |
4 | 2008/12/01 | -8.9% |
5 | 2008/09/29 | -8.8% |
上昇率(上位5日)
1 | 2008/10/13 | 11.6% |
---|---|---|
2 | 2008/10/28 | 10.8% |
3 | 2020/03/24 | 9.4% |
4 | 2020/03/13 | 9.3% |
5 | 2009/03/23 | 7.1% |
(使用した指数)米国株式:S&P500種株価指数(配当込み、米ドルベース)
税金・手数料などは考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。ファンドの運用実績ではありません。過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
2004年7月末を10,000ポイントとして投資を開始した場合。
(使用した指数)米国株式:S&P500種株価指数(配当込み、米ドルベース)
税金・手数料などは考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。ファンドの運用実績ではありません。過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成
※2米国の金融機関SEIインベストメンツが抱える、「ゴールベースを実践している顧客」と、それ以外の「伝統的な方法で運用を行なっている顧客」の2008年金融危機時の行動の違いを調査。
(出所)大庭昭彦「我が国の資産運用の質的向上に向けて」『月刊資本市場』No.375,2016.11, p.24-33より野村アセットマネジメント作成
過去の株式市場から学ぶ 暴落局面における資産運用の心構え
① 群集心理に惑わされない
まずは、投資先についてきちんと理解できているか確認しましょう。何に投資をしているのか理解し、投資先を選択した理由もきちんと持っておけば、暴落理由と照らし合わせて考えることで、冷静な判断に繋がるかもしれません。また、状況によっては資金追加を行なう投資局面と捉えることができるかもしれません。
② 自分のリスク許容度を再確認
いつ使うお金なのか、何のために使うお金なのか再確認し、リスクを取り過ぎていないかなど今一度確認してみましょう。
成し遂げたい「目標」が明確で、「いつ」まで置いておくことができるかが分かっていれば、金融危機のような大きな下落局面においても投げ売りを防ぐことにも繋がります。
また、投資信託の投資対象が株式の資産に偏っていて下落幅に対する心理的負担が大き過ぎると感じる場合は、異なる値動きをする投資対象を組み入れて分散投資によるリスク低減を検討してみるのも1つです。
- どのような資産に投資をしているのか確認してみましょう
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投資先の選び方
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資産運用の不安を解消するためにできること