2000年以降ってどんな時代?(日本編)

歴史から学ぶ資産運用

おじいちゃんにインタビュー!2000年代の日本ってどんな時代?

日々、様々なニュースが市場環境に影響を与えています。過去の出来事が市場にどのような影響を与えてきたのか、歴史を知ることで、資産運用のヒントになるかもしれません。
日本人とアメリカ人の両親から生まれた「私」は、日本とアメリカに住む祖父がいます。日本人の祖父には日本の歴史、アメリカ人の祖父にはアメリカの歴史、それぞれに話を聞いてみることにしました。
今回は日本人の祖父から2000年以降の日本について聞いていきます。

登場人物

  • 私:18歳(2005年生まれ)

    私:18歳(2005年生まれ)

  • 日本人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

    日本人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

日本の2000年以降の出来事について教えて

日経平均株価と米ドル/円レート※1の推移

期間:1999年12月末~2023年12月末、月次

日経平均株価と米ドル/円レートの推移の図

※1米ドル/円レートは17時時点。

(出所)ブルームバーグ、日本銀行のデータを基に野村アセットマネジメント作成

2000年以降は私も生まれてるから一緒に振り返っていけるね!2000年はおじいちゃんが50歳の時だよね。
2000年代も引き続き株価の下落から始まるんだ。2000年~2002年にかけて景気低迷の時代になった。日経平均株価は2000年1月末の19,539円に対して、2002年12月末には8,578円と1万円以上も下がったんだよ。原因はデフレによる低迷もあったし、あとはアメリカで起きたITバブルの崩壊と米国同時多発テロだね。
アメリカの出来事が原因で日本の株価も下がってしまうんだね。
そうだね。日本は世界各国と貿易をしていて、特にアメリカや中国とは強い繋がりがあるから、アメリカの経済危機の時には日本にも影響が出てしまうね。米国同時多発テロは中継で状況が何度も放映されてとてもショッキングだったよ。
「9.11」という言葉は私も知ってるくらい歴史的な悲しい事件だよね。
そうだね。その後の出来事としては、2003年にりそな銀行に公的資金注入がされて実質的に国有化されたんだ。りそな銀行は合併・統合を繰り返しながら2003年に今の名前に商号が変わったんだけど、合併前の各銀行は不良債権問題を抱えていたから、りそな銀行は経営不振の状態だったんだ。倒産を防ぐために国がりそなホールディングスの株を約2兆円買うことで、資本を注入した。りそな銀行はその後12年かけて返済をしていったんだよ。
日本の経済はその後どんな出来事があったの?
2007年に郵政民営化が行なわれたんだ。
1980年代に電電公社が民営化したって話を聞いたね。郵政民営化って郵便局が民間企業になるってことだよね。

電電公社民営化の詳細はコラム「1980年代ってどんな時代?(日本編)」をご覧ください。

郵便局では郵便事業だけじゃなくて、貯金・保険という金融業も行なっていたんだけど、2007年に日本郵政と4つの事業会社に分かれて、郵便・貯金・保険の郵政三事業が民営化されたんだ。さらに2012年に再編されて、郵便は日本郵便(郵便局)、貯金はゆうちょ銀行、保険はかんぽ生命保険という現在の体制になったんだよ。
郵政民営化はなんで行なわれたんだろう?
民間企業になることによってサービスが向上すること、一般企業同様に利益が出れば税金を払うことになるので、結果として将来の国民の負担を減らす効果が期待できること、郵便貯金と簡保資金の合計約335兆円※2もの資金を国から民間に移動させることで国民の貯蓄を経済の活性化に繋げられるのではないか、などの目的があったといわれているね。

※2平成17年3月当時。(出所)参議院「郵政民営化の検証-そのメリットを中心として-」(

なるほど。すごく大きなお金が動くきっかけになったんだね。
そうだね。2007年くらいまでは日本の経済も緩やかに回復していたんだ。でも、あまり良くなっている感覚はなくて「実感に乏しい景気回復」※3なんて表現されたりもした。経済の成長が緩やかだったし、お給料も物価もほとんど上がらなかったからだろうね。

※3(出所)内閣府「平成19年度 年次経済財政報告」(

たしかにお給料が上がらないと景気がいいと感じにくいよね。
日経平均株価もITバブル以来の2万円台回復か?!なんていわれたけど、結局その後アメリカでサブプライムローン問題が明るみになって、2008年9月に大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻するという事態になったんだよ。
リーマン・ショックだね。私もまだ小さかったけど、その後何度も聞いた言葉だね。ところでサブプライムローンって何?
アメリカの信用力の低い借り手向けの住宅ローンのことだよ。でもおじいちゃんはリーマン・ショックの詳しいことは知らないから、アメリカに住むおじいちゃんにどんな状況だったか聞いてみたいね。

リーマン・ショックの詳細はコラム「アメリカ編」をご覧ください。

アメリカ人のおじいちゃんがもうすぐ日本に遊びに来るから聞いてみるね。リーマン・ショックの時、日本にはどんな影響があったの?
世界の株式と同じように日本でも株安が加速するんだ。日経平均株価はリーマン・ショックの約1ヵ月後にバブル崩壊後の最安値となり一時7,000円を切る場面もあったんだよ。株安とともに円高も進行していった。理由はいろいろあるけど、リーマン・ショックが起こる前、日本の低金利を利用して外国人が円を借りて、金利が高い国の通貨へ投資する取引(円キャリートレード)が増えていたんだ。日本の金利と高金利の国の金利差が収益になるからね。
金利差は為替に影響があるって聞いたことあるな。
投資家は金利の高い国の通貨で運用すると高い利息が受け取れるから、金利の高い国の通貨が買われる傾向があるんだ。2006年くらいまでは日本の超低金利によって海外との金利差が広がり円安に進んでいた。だけど、リーマン・ショックが起きたことによって、投資家はリスクを回避するために一旦円に戻す、つまり円を買うことになるから円高になったんだよ。サブプライムローン問題が出てくる前の2006年12月末に1米ドル=約118円だったのがリーマン・ショックが起こった翌年2009年9月の月末には1米ドル=約89円と約30円も円高になった。
円高の影響で日本はその後どうなったの?
世界中で景気が悪化して、外国からの需要も落ち込んで輸出は減少していくし、円高による影響もあって厳しい時期が続いたんだ。それに世界各国が景気対策を行なったことでリーマン・ショックからの回復に動き出すことが期待された中、日本では2011年に悲しい出来事が起こってしまうんだ。
東日本大震災だね。
震災で日本全体がパニックになったし、経済へ与えたダメージも大きかったね。
私も小さかったけどよく覚えてる。電車が止まったり、停電になったりして、その後続く余震もとても怖かった。
そうだね。原子力災害によって電力の供給が不安定になったり、物流も止まってしまったり、被害が本当に大きくて、約16.9兆円※4にものぼると推計されているんだ。被害の復旧や復興には時間がかかるといわれていたよね。でも日本は復興に向けて企業も個人もみんなが力を合わせて頑張ったから想定以上に早い回復を遂げることができたんだ。

※4内閣府「令和4年版 防災白書」(

復興のために全国からボランティアが集まって、物資を届けたり、炊き出しを行なったりしていたよね。
辛いことが続いたけど日本が一丸となった時の国の強さを感じることができた気がするな。その後、2012年に2回目の安倍政権が発足し、翌年アベノミクスが始動するんだ。
アベノミクスは日本にどんな影響を与えたの?

アベノミクス「3本の矢」(2013年6月14日発表)

第1の矢 大胆な金融政策 金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレマインドを払拭
第2の矢 機動的な財政政策 約10兆円規模の経済対策予算によって、政府自らが率先して需要を創出
第3の矢 民間投資を喚起する成長戦略 規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へ

(出所)首相官邸「やわらか成長戦略。~アベノミクスをもっと身近に~」(2015年5月内閣官房)()を基に野村アセットマネジメント作成

1991年のバブル崩壊以降ずっと続いたデフレからの脱却と、持続的に経済成長をして日本が豊かになることを目指した政策なんだ。まずは第1の矢で市中のお金を増やしてデフレを脱却し、第2の矢で政府支出によって経済を活性化させて、第3の矢で規制緩和などによってビジネスを自由にできるようにする、という戦略を掲げて、持続可能な経済成長への道筋を示したんだよ。当時の日本銀行総裁だった黒田総裁が異次元の金融緩和を行なうと発表したニュースはインパクトがあったね。「市中に供給するお金を2倍にして2年程度で物価目標2%の安定的な達成を目指す」というものだった。「黒田バズーカ」とも呼ばれたんだよ。その効果もあって、日経平均株価と為替は異次元の金融緩和を始めた2013年4月末時点で13,860円、1米ドル=約98円だったのが、同じ年の年末には16,291円、1米ドル=約105円まで株高、円安が進んだんだ。
アベノミクスや日本銀行の政策は効果的だったんだね。
そうだね。日経平均株価や経済成長率、企業業績や雇用などの改善が顕著に表れていったよ。企業業績が改善したことによって雇用が増えて、給料の上昇にも繋がる。給料が増えると消費活動も活発になるから経済の循環が良くなって企業の業績がさらに良くなるというスパイラルが見えてきた。この時の景気回復は実感した人も多いんじゃないかな。
2000年代はほかにはどんな出来事があったかな。
2000年代に入ってから2度の消費税の引き上げがあったね。
8%と10%に消費税率が引き上げられたね。

消費税率引き上げの推移

1989年 1997年 2014年 2019年
税率 3% 5% 8% 10%※5

※5飲食料品(お酒・外食を除く)等の購入に係る税率については8%とする軽減税率制度を実施。

(出所)財務省()、国税庁()のHPを基に野村アセットマネジメント作成

そうだね。1989年に消費税が導入されて、1997年に5%に引き上げられてから15年以上5%が続いていたけど、2010年代に2回引き上げを行なったんだ。増収分は社会保障制度の財源として、高齢者だけでなく全世代に向けた支援を行なうためだとされているね。
たしかに高齢者の支援だけでなく、幼稚園・保育園の無償化や、高校の授業料の無償化とかも打ち出されたね。現在は消費税の引き上げだけではなく物価も上がりだしているよね。アベノミクスでデフレ脱却の政策が打ち出されたことが理由なの?
 異次元の金融緩和政策でデフレ脱却を目指したけど、結局すぐにはデフレは脱却できなかったんだ。でも前にも話していたけど*コロナ禍の行動制限が緩和されたことやロシアによるウクライナ侵攻の影響などによって、2022年の夏以降から物価上昇が前年同月比で2%後半~4%程度の状況が続いているんだ。最近はニュースでもインフレってよく聞くよね。インフレはお金の実質的な価値が下がることになるから、今は年金生活だし、金利がほとんどつかない日本にいるおじいちゃんにとっては将来が少し不安なんだよね。アメリカはもっとインフレが進んでいるみたいだから、今度アメリカ人のおじいちゃんに会う時にどんな対策をしているのか聞いてみてくれないかな。

インフレに関しては コラム「1970年代ってどんな時代?(日本編)」でも話しています。

たしかに、おじいちゃんにいろいろ話を聞いてから、インフレや金利のことを調べるようになったんだけど、2022年は欧米ではインフレが過熱してるっていうニュースも出てたし、2023年に入ってからは少し落ち着いてきた、って話を聞くようになったよね。今度アメリカのおじいちゃんと話す時に、アメリカの歴史やインフレの対策について聞いてみるね。

まとめ
(2000年代、2010年代は最高値と最低値)

2000年代 2010年代 現在
金利
(定期預金/1年)
0.030%
(2004年4月末~2006年2月末)
0.092%
(2010年1月末)
0.005%
(2023年12月末)
0.349%
(2007年6月末~2007年12月末)
0.010%
(2019年1月末~2019年12月末)
日経平均株価 20,337.32円
(2000年3月末)
8,434.61円
(2011年11月末)
33,464.17円
(2023年12月末)
7,568.42円
(2009年2月末)
24,120.04円
(2018年9月末)
為替※6 1米ドル=133.89円
(2002年2月末)
1米ドル=76.30円
(2012年1月末)
1米ドル=141.40円
(2023年12月末)
1米ドル=86.15円
(2009年11月末)
1米ドル=124.22円
(2015年7月末)

*最高値、最低値は月次の数値。

※6米ドル/円レートは17時時点。

(出所)ブルームバーグ、野村総合研究所SuperFocus、日本銀行のデータを基に野村アセットマネジメント作成