1980年代ってどんな時代?(日本編)

歴史から学ぶ資産運用

おじいちゃんにインタビュー!1980年代の日本ってどんな時代?

日々、様々なニュースが市場環境に影響を与えています。過去の出来事が市場にどのような影響を与えてきたのか、歴史を知ることで、資産運用のヒントになるかもしれません。
日本人とアメリカ人の両親から生まれた「私」は、日本とアメリカに住む祖父がいます。日本人の祖父には日本の歴史、アメリカ人の祖父にはアメリカの歴史、それぞれに話を聞いてみることにしました。
今回は日本人の祖父から1980年代の日本について聞いていきます。

登場人物

  • 私:18歳(2005年生まれ)

    私:18歳(2005年生まれ)

  • 日本人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

    日本人のおじいちゃん:73歳(1950年生まれ)

日本の1980年代の出来事について教えて

日経平均株価と米ドル/円レート※1の推移

期間:1979年12月末~1989年12月末、月次

日経平均株価と米ドル/円レートの推移の図

※1米ドル/円レートは17時時点。

(出所)ブルームバーグ、日本銀行のデータを基に野村アセットマネジメント作成

1980年代はおじいちゃんが30代の頃だね。どんな時代だったの?
一言でいうと「バブルの時代」だったね。1980年代後半はバブル景気で、今思えば異常な状態だったんだと思うよ。
バブルってよく聞くよね。「すごく景気が良かった」って印象だけど、なんでバブルになったの?
きっかけは1985年9月の「プラザ合意」だね。その当時のG5といわれる先進5ヵ国(アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・日本)が開催した会議で、為替レートの安定化に関する合意を取ることになったんだ。それまでのアメリカはインフレの影響で金利を上げていて年率20%※2くらいの時代があって、その影響で米ドル高が進んだんだよ。そして、同時期の日本は、日本製の商品の輸出が増えていったんだ。その結果、日本は輸出と円安による貿易黒字。反対にアメリカは米ドル高などによる貿易赤字が問題になっていったんだ。

※2金利はFF金利誘導目標。(出所)ブルームバーグ

アメリカの金利が20%だなんて私の想像を超える高さだったんだね。日本の商品が海外でたくさん売れたって言ってたけど、どんな商品が売れたの?
自動車や電化製品とかがよく売れてたね。自動車の生産台数が世界一になるほどだよ!「メイドインジャパン」が高品質の代名詞ともいわれて、品質の良さが成長を後押ししたんだと思う。日本人特有のモノづくりへの熱意や繊細さ、アイデアが詰まった製品が海外で評価されたんだ。
今はアメリカ中心にいろいろなテクノロジーが進化しているけど、この時代の日本の勢いはすごかったんだね。おじいちゃんもそんな勢いの中で働いてたんだね!
その頃、斬新だなと思ったのは、携帯電話の先駆けともいえる「ショルダーフォン」だね。車載用にも使えるけど、肩からかければ、どこでも電話できるっていうのが画期的だったなぁ。でも重さは3㎏くらいあったんだよ。時代を感じる大きさだね。(ご参考「ショルダーフォン」イメージ)
NTTは「ショルダーフォン」が発売された同年1985年に民営化されたんだけど、そもそもNTTって「電電公社(日本電信電話公社)」という、国営の会社だったって知ってた?
なんとなくは知ってるけど、NTTっていう名前の印象しかないなぁ。それに今はNTTだけじゃなくて通信会社もたくさん増えたよね。
通信の自由化を背景に民営化されて、最初はNTTが中心だったけど、今はいろいろな会社が参入しているよね。NTTはその後1987年に株式公開をするんだけど、その時、とても話題になったんだよ。
株式公開って何?
株式公開っていうのは、その会社の株式を自由に売買できるようにすることだよ。NTTは民営化によって、それまで国が持っていた株式を売り出して、個人が買えるようにしたんだ。株式が公開される前に買える価格(1次売出し価格)が1株119万7,000円だったのに対して、公開されて最初に付けた価格は160万円、さらに公開から2ヵ月で318万円という史上最高値をつけたんだよ。

*個別銘柄を推奨するものではありません。

えっ!売出し価格で買った人は2ヵ月で2.5倍以上になったの?
そうだよ。でも、その後同じ年(1987年)の10月にブラックマンデーといわれる世界的な株価の大暴落が起こって、年末には216万円まで下落したんだよ。
そんな短期間で大きく動くと、ギャンブルのような感覚を持ってしまう人もいるかもしれないね。
株式を持つのが怖いと思った人も多かったかもしれないね。話を戻すと、そんな貿易摩擦が起こったことで、プラザ合意へと至ったんだ。その後円高が急激に加速し、合意前が1米ドル約237円だったのが1年後約156円まで円高が進んだんだよ。※3

※3 合意前は1985年8月末、1年後は1986年8月末、17時時点。(出所)日本銀行

1年間で80円以上も為替が動いたんだね。円高の影響で日本はその後どうなったの?
円高になったことがきっかけで、海外で製品を作ってそのまま海外で売るという動きも活発になった。例えば、東南アジアなどの海外に工場を移転して、現地の人たちを雇用してコストを抑えながら製造する企業が増えたんだ。おじいちゃんは電化製品を作るメーカーで働いていたから、その頃は海外出張して、現地の工場を視察することもあったなぁ。
円高になると、米ドルで受け取った代金を円に戻す時に影響を受けちゃうけど、現地での売り上げを現地通貨のまま使えば、円高の影響も受けにくいってこと?
そういうことだね。ほかにも、円高が急激に加速した影響を和らげるために、日本銀行が低金利の政策を打ち出したんだ。企業や個人がお金を借りやすくなるようにね。お金を借りる人が増えることで、お金が市中にたくさん出回ることになって、そのお金で株を買ったり不動産を買ったりする人が増えたんだよ。
さっきのNTTの話もすごかったけど、バブルの時の株価はすごかったんだね。未だに日本はその時の価格までいかないってニュースで見たことがある。
1980年1月末の日経平均株価が約6,800円だったのに対して、経済が成長していったことで、プラザ合意前の1985年8月末で約12,700円に上昇した。そして、その後も株価の勢いは止まらず1989年の年末に38,915.87円という史上最高値を記録したんだ。その当時は、株価がどんどん上がっていくから、おじいちゃんも多少株を買っていた時期もあったよ。「儲かったな」って経験もある。
おじいちゃんも株を持ってたんだね。知らなかったな。
あと、忘れちゃいけないのが、株価だけでなく不動産の価格もどんどん上がっていったんだ。特に東京は1983年3月からの2年間で約1.5倍、1985年3月からの1年間でそこからまた1.5倍以上になった。※4「東京23区でアメリカ全土が買える!」なんて揶揄されるくらいだったんだよ。

※4 (出所)国土交通省「バブル期の地価高騰及び下落過程についての考察」(

日本がアメリカより高いなんて!今じゃ考えられないな。

世界の時価総額ランキングTOP10

  1989年※5 現在※5
1位 NTT(日本) アップル(米国)
2位 日本興業銀行(日本) マイクロソフト(米国)
3位 住友銀行(日本) サウジアラムコ(サウジアラビア)
4位 富士銀行(日本) アルファベット(米国)
5位 第一勧業銀行(日本) アマゾン・ドット・コム(米国)
6位 IBM(米国) エヌビディア(米国)
7位 三菱銀行(日本) テスラ(米国)
8位 エクソン(米国) メタ・プラットフォームズ(米国)
9位 東京電力(日本) バークシャー・ハサウェイ(米国)
10位 ロイヤル・ダッチ・シェル(米国) イーライリリー(米国)

*個別銘柄を推奨するものではありません。

※51989年は1989年4月時点、現在は2023年9月末時点。

(出所)金融庁()の資料、ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

この表を見てみて。世界の時価総額ランキングで1989年と現在を比較しているよ。信じられないかもしれないけど、1989年のランキングTOP10の中に日本企業が7社も入っていたんだ!その中でも銀行の株が多いね。一方で現在はアメリカの企業がほとんどだよね。1980年代後半の日本はこんなにも世界で影響力のある国だったんだよ。
気になったことがいっぱい!まずは日本の銀行の名前が今と全然違う!銀行の統廃合があったのは知ってたけど、昔の銀行名を見ても、今のどこの銀行のことなのかわからないのもあるな。でも、それより、1989年のランキングに日本の会社がこんなに入っていることにびっくりした!逆に、現在のランキングTOP10に日本の企業は入っていないんだね…
1990年代に入るとバブルが崩壊して、ランキングが大きく動くことになるんだ。あと、話は変わるけど、同じ1989年は日本で初めて消費税が導入された年でもあるんだよ。
そうか。消費税って今は当たり前だけど、おじいちゃんの若い頃は消費税を計算しなくてもいい時期が当たり前のようにあったんだ。
そうなんだ。導入された当初は3%だったから、小銭のおつりが煩わしかったよ。
今のように電子マネーもないしね。1980年代はおじいちゃんにとってどんな時代だった?
やっぱりバブルの印象が一番だね。為替も株も不動産も何もかもが激動だった。でもその後のバブル崩壊を経験したし、振り返ると1980年代はいい時代だったな、という印象だね。
そうなんだね。1980年代の激動の日本は、私にとって知識としては知っていても、感覚としては知らない日本って感じだな。各年代のことをちゃんと知っておくことが、今後の資産運用のヒントになりそうだね。バブルのその後のことも聞きたいから、1990年代以降についてもいろいろ教えてね。

まとめ
(1980年代は最高値と最低値)

1980年代   現在
7.75%
(1980年4月末~1980年11月末)
金利(定期預金/1年) 0.005%
(2023年9月末)
3.39%
(1987年3月末~1989年5月末)
6,556.19円
(1980年3月末)
日経平均株価 31,857.62円
(2023年9月末)
38,915.87円
(1989年12月末)
1米ドル=277.40円
(1982年10月末)
為替※6 1米ドル=148.77円
(2023年9月末)
1米ドル=121.85円
(1988年11月末)

*最高値、最低値は月次の数値。

※6米ドル/円レートは17時時点。

(出所)ブルームバーグ、野村総合研究所SuperFocus、日本銀行のデータを基に野村アセットマネジメント作成